算命学の問題点

算命学について

算命学とは、高尾義政(1941−1990)によって創作された、生年月日を使用して、個人の運命を占い、予測する技法を言います。「算命学」という名称は、高尾義政によって商標登録されていましたが、現在は所有権が移転しているようです。「算命」とは、本場の中国においては「占い」の類を意味しており、固有の体系を指すものではないようです。
算命学とは、高尾義政氏(1941〜1990)によって創作された、生年月日を使用して、個人の運命を占い、予測する技法を言います。「算命学」という名称は、高尾氏自身によって商標登録されていましたが、現在は所有権が移転しているようです。「算命」とは、本場の中国においては「占い」の類を意味しており、固有の体系を指すものではないようです。ですから、現在の日本で流行っている算命学とは、高尾義政氏によって個人的に確立された運命学といえるのではないでしょうか。中国政府の文化大革命による古典の弾圧によって、日本に逃れてきた中国人が高尾氏に伝えたといわれています。それは、算命学の内容から判断すると、子平、八字、命理(日本では四柱推命といわれる)などと同じものと考えることが出来るでしょう。
高尾義政氏は、そうした基礎に独自の研究に基づく道教的な理論を加えて、一つのジャンルとして体系化しています。四柱推命と算命学の大きく異なる点は、生まれた時間を使用しないところと、それを独自の表(システム)として、体系化している点でしょうか。他にも四柱推命には無い独自の技法を採用しています。算命学の一番の特徴は、四柱推命の通変星と12運の要素を、表として簡潔に表現しているところでしょうか。この表は四柱推命の複雑な理論を抜きにして、誰にでも理解できるように工夫されたものです。確かに容易に理解しやすい点では、四柱推命を上回ているかもしれません。四柱推命は複雑で分かりにくい点が欠点といえるでしょう。四柱推命では干支の複雑な要素に惑わされて、判断そのものが間違ってしまうことがよくありますが、シンプルな表を採用しているこの算命学では、その点は有利に働いているといえるでしょう。まず、予め作成された独自の暦を使用して「人体星図」という表と、「陰占宿命」という表を作ります。下図は「人体星図」の表ですが、これが生まれ持った宿命を表します。

・中心星は、四柱推命でいう元命に相当します。自分自身を表します。
・第一命星は配偶者を意味し、中心星との関係によって相性をみます。
・第二命星は部下などの目下のものを意味し、中心星との相性をみます。
・第三命星は恋人を意味し、中心星との相性をみます。
・第四命星は上司などの目上を意味し、中心星との相性をみます。

すべての判断は自分自身である中心星に拠ります。中心星に入る10種の星と周囲の命星に入る星との相性によって、良し悪しを判断していきます。貫策星・石門星・鳳閣星・調舒星・禄存星・司禄星・車き星・牽牛星・龍高星・玉堂星の10種の星(10大主星)を使って、判断していきます。10種の意味は以下の通りです。

・貫策星(かんさくせい)− 四柱推命の比肩に相当します。日干と同じ五行で陰陽が同じものを指します。自己意識を表します。

・石門星(せきもんせい)− 四柱推命の劫財に相当します。日干と同じ五行で陰陽が異なるものを指します。同様に自己意識を指しますが、意味は多少異なります。

・鳳閣星(ほうかくせい)− 四柱推命の食神に相当します。日干から生じる五行で陰陽が同じものを指します。享楽的な感情を表します。

・調舒星(ちょうじょせい)− 四柱推命の傷官に相当します。日干から生じる五行で陰陽が異なるものを指します。攻撃的な感情を表します。

・禄存星(ろくぞんせい)− 四柱推命の偏財に相当します。日干から剋す五行で陰陽が同じものを指します。身体的な要素を表します。

・司禄星(しろくせい)−四柱推命の正財に相当します。日干から剋す五行で陰陽が異なるものを指します。身体的な要素で基礎的なものをいいます。

・車騎星(しゃきせい)− 四柱推命の偏官に相当します。日干を剋する五行で陰陽が同じものを指します。理性的な要素です。

牽牛星(けんぎゅうせい)− 四柱推命の正官に相当します。日干を剋する五行で陰陽が異なるものを指します。同様に理性的な要素ですが、穏やかさがあります。

・龍高星(りゅうこうせい)− 四柱推命の偏印に相当します。日干を生じる五行であり、陰陽が同じものを指します。知性的な要素を表します。

・玉堂星(ぎょくどうせい)− 四柱推命の印授に相当します。日干を生じる五行であり、陰陽が異なるものを指します。知性的な要素ですが品格があります。

次に12大従星という要素を使って、細かな判断をしていきます。12大従星はエネルギーの強弱を意味し、それを12段階に区別したものです。「12大従星」は四柱推命の「12運星」に相当します。

天報・・胎
天貴・・長生
天恍・・沐浴
天南・・冠帯
天禄・・建禄
天将・・帝旺
天堂・・衰
天胡・・病
天極・・死
天庫・・墓
天馳・・絶

命星の補佐的な役割を果たし、情緒的に作用します。判断の方法は、この人体星図を中心として、陰占宿命、天沖殺、12親干法などの組み合わせで、総合的に判断していきます。このあたりの構成はシンプルであり、理解しやすいように工夫されています。四柱推命にはない、親切な配慮といえるでしょう。占いの理論的なものよりも、「自分の事をすぐに知りたい」という人には向いていると思います。随所に高尾義政の工夫がこらされており、四柱推命よりは親近感を覚えやすいという人もいるようです。さて、算命学はその技法は独自のものといえますが、生年月日を使用するところや、命盤などの構造的なもの、また使用している10大主星や12大従星などの象意はまったく同一であるところから、そのルーツは子平、八字、命理などと同一のものだと考えられます。日本では「四柱推命」の名で知られておりますが、その名は日本で創作されたものですから、あえてこれらものを厳密に区別するのは難しいでしょう。四柱推命にも独自の流派が数多く存在しており、技法も全く異なるものもありますから、この算命学も四柱推命と同じ起源を持つ、同根とみなすことが出来ると思います。算命学をされる人は、その起源を中国の戦国時代(前403〜前221)におき、さらにその創始者として鬼谷子(戦国時代の縦横家)の名をあげますが、鬼谷子という人物の姓氏、事跡ともに不明であり、隠棲していた鬼谷(山西省沢州府内)の土地をもって鬼谷というわけですから、実の名前でもないわけです。また、彼が残した資料や文献等もなく、彼が創始者であると確定できるたしかな物はないようです。それは中国の拳法や気功法、占いなどでよく使用される「一子相伝」のルーツでよく挙げられるように、あくまでも伝説的なものであるといえるのではないでしょうか。ですから、算命学の本当の起源を確定できる段階で求めるならば、ほぼ四柱推命と同じ起源に行き着くことになるでしょう。中国の文献で確認出来る範囲では、12世紀の徐子平が現在の形を作り出したとされています。それ以後、徐大升の『淵海子平』、劉伯温の『滴天髄』萬育吾の『三命通会』と発展してきました。これは確認できる資料ですが、それ以前にさかのぼることも今後は考えられますが、現在の時点でそこまでしか確認できないのです。算命学や四柱推命の最大の特徴は、「干支暦」を使用する点にあるでしょう。「干支暦」とは中国古来の陰陽五行思想に基づいた暦です。この「干支暦」の起源は非常に古く、殷墟からも発掘されているところから、数千年前にその起源をさかのぼることが出来ます。中国ではこの干支暦を王朝の暦として採用し、権威付けられてきました。それは、あらゆることに応用されているものですが、算命学も四柱推命もその占断ベースをこの干支暦に頼っているところに特徴があります。四柱推命はその干支を年、月、日、時間と横に並べるシンプルなものでありますが、一方で算命学は、その干支暦から作成された命式自体をオリジナルな暦として使用しています。
星の解釈などに大きな違いはありません。算命学は初学者向きであり、表などを適切に使って、理解しやすいように親切に作られています。四柱推命は、干支の力量計算や根の作用、大運干支の作用など総合的に判断しなければならないために、基本的な判断を間違うことがあります。また、「空亡」や「神殺」などの付随的なものに捉われて、判断自体を大失敗してしまうこともよくあります。算命学は理解しやすいものであり、親切に作られたものですから、運命を概略的に知る物としては、便利であり良いものだと思います。算命学では「人体星図」という表を使用して、実際の判断をしていきます。確かにこの表は分かりやすく、また明瞭ではあります。自分の知りたいことをすぐに調べることが出来るようになっていますので、その点では優秀なものです。しかし、もともとは干支の羅列を表に変換してしまったための問題点が出てくるのです。それは、干支自体を1つの表にして、その表だけにすべての判断を頼っているために、そのベースにある干支自体が持つ、その力学的な関係を読むことができないという点にあります。四柱推命に詳しい方は、すぐに分かると思いますが、四柱推命の判断は、干支の並び方とその性質、その配置によって、干と支の力学的な関係を読むことが非常に重要になります。それは、干支の変化によって解釈が全く変わっていくからです。たとえば、干と干の関係は、その相性によって力量を変化させます。それは相生、相剋、比和の関係から論じなければなりません。つまり、同じ干であっても、配置の仕方によっては力量を変化させるのです。また、算命学では生まれた時間を考慮しませんが、その点も考慮すべき点です。四柱推命は時間の要素を入れることによって、「四柱」といわれるのですが、実際に時間の軸は非常に重要な要素なのです。たとえば時間の軸に、生年・生月・生日に全く無い別の要素が入ることがあるのです。時間の軸とは、その人の内面的な本質を的確に表しておりますから、算命学でこの要素を無視するのは、あまりにももったいないといえるでしょう。また、これは四柱推命にもいえることですが、実際の時間というのは地域によって時差があり、北海道と沖縄では1時間以上の時差がありますから、時差を補正していない四柱推命も間違った判断をしてしまうことになるのです。たとえば出生地によっては、午前0時前後に生まれた場合、地域によっては、前日生まれになったり、あるいは後日生まれになったりするのです。正確な判断をしたければ、時間の補正は絶対的な要素といえるでしょう。また、時間の要素によって日干が変化して、まったく別の命式になる人がたまにおります。このような実例も今まで検証してきました。このときは命式全体がまったく別ものに変化していますから、四柱推命でも時間を入れないものや補正をしないものは、まったく見当違いの判断をすることになります。それは算命学も同様かもしれません。その点は今後、算命学がさらに実証性を向上させていく上での大きな課題になるでしょう。