ヴォイス

ヴォイス


接辞の付加に伴って補足語の格が規則的に変更する現象にかかわる文法形式を「ヴォイス」という。代表的なものとして、受身表現と使役表現とがある。
(例)
子供を叱る。→子供が叱られる。
子供が寝る。→子供を寝させる。

1能動態・・動作主を主語にして述べる方法。
母親が娘を褒めた。
祖母が死んだ。

2受動態・・被動作主を主語にして述べる方法。動作主体はニ格・ニヨッテ格・カラ格で示される。

a直接受身・・対応する能動文がある。
母が娘を叱った。→娘は母に叱られた。
部長は鈴木さんに山のような書類を渡した。
→鈴木さんは部長から山のような書類を渡された。

b間接受身・・対応する能動文がない。強い受影性が感じられ、出来事の外にいる者にとってその出来事は迷惑だ、不愉快だということが含意される。
(私は)雨に降られた。
雨が降る。
(私は)子供に泣かれた。
子供が泣く。
※受身の作れない動詞・・自動詞
ある・要る・できる・聞こえる・読める・書ける(可能動詞)
さずかる(自他動詞)・足りる・勝る・売れる(自動詞)
非情の受身
ビルが建てられた。
迷惑の受身・持ち主の受身
私は財布を盗まれた。
財布を盗む。





3使役態
(構文)
1ガ格+ニ格+ヲ格−他動詞+せる・させる
  太郎が弟に荷物を運ばせた。
  私に食事代を払わせてください。
2ガ格+ヲ格/ニ格−自動詞+せる・させる
   花子は長女を買い物に行かせた。
   花子は長女に買い物に行かせた。
(意味)
a強制
太郎を買い物に行かせた。
b許容・放任
太郎に買い物に行かせた。
c責任・手柄
娘を死なせた。娘を大学に入学させた。
※使役受身
ボクサーはセコンドにストップさせられた。
無生物主語の使役
彼の一言が彼女を落ち込ませた。

4可能態
子供が漢文を読む。→子供には漢文が読める。
彼は上手に文字が書ける。(能力可能)
10時になりましたら、もう泳げます。(状況可能)

5自発態
啄木が故郷を偲ぶ。→啄木には故郷が偲ばれる。
自然と昔のことが思い出される。
太郎はみんなに陽気な人間だと思われている。(引用形式の受身表現)

6授受動詞と視点
ガ格主語 ニ格補語 共感度・視点
アゲル 与え手 受け手 与え手
クレル 与え手 受け手 受け手
モラウ 受け手 与え手 受け手
(例)
私の妹が田中に本をあげた。
田中が私の妹に本をくれた。
私の妹が山田に本をもらった。