日本語の系統
1.国語と日本語
国語・・それぞれの国において、国民一般が自国語として承認している言語。一国のうちにいくつかの言語が行われている場合、中心となっている民族の言語が国語として認められる。
※「国語は国民の慈母なり」(上田萬年『国語のため』)
日本語・・他の言語から見た場合の名称。国際化・学際化に伴い、使用されている
名称。
2.日本語研究
(中世から現代へ)
歌学→国学(詠歌作法と注釈)→国語学・国文学→日本語学・日本文学
(研究法)
実用的研究・・口語
文献学的研究・・写本
言語学的研究・・外国語との対照
3.関連分野
音声学・音響学・文字学・心理学・論理学
社会学・文献学・民俗学・歴史学・法学・文学
4.言語と音
(ソシュールの言語学)
a.言語の線条性
b.言語の恣意性
c.言語は「ラング(langue)」と「パロール(parole)」から成り立つ。
「ラング(langue)」・・材料である脳内の言語観念。社会的側面。
「パロール(parole)」・・行為と具体的に発音されて表現されたもの。
個人的側面。
(参考)
橋本進吉「文節文法」と時枝誠記「入れ子型構造」
ソシュール「共時言語学」とパウル「通時言語学」
チョムスキー「生成文法」とラネカー「認知文法」
5.日本語学に影響を与えた20世紀の主な言語学者
a.ヨーロッパ流・・比較文献学・通時的(パウル)←→共時的(ソシュール)
b.アメリカ流・・アメリカ・インディアンの言語と文化の保存・文化人類学
(主な言語学者)
ソシュール(1857-1913スイス)『一般言語学講義』
トルベツコイ(1890-1938ロシア)
ブルームフィールド(1887-1949アメリカ)『言語』
イェルムスレウ(1899-1965デンマーク)
チョムスキー(1928-アメリカ)『言語と精神』
フンボルト(1767-1835ドイツ)
サピア(1884-1939アメリカ)『言語』
ウォーフ(1897-1941アメリカ)
ヤコブソン(1896-1982ロシア)
グリム(1785-1863ドイツ)
パウル(1846-1921ドイツ)『言語史原理』
マルティネ(1908-1999フランス)
ヴィトゲンシュタイン(1889-1951オーストリア)『言語哲学論考』『言語哲学
探究』
6.世界の言語・・系統分類(通時的)・音韻対応・・比較言語学
1.インド・ヨーロッパ(インドゲルマン・印欧)語族
英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロシア語など
cf.バベルの塔(『旧約聖書』)・インド・ヨーロッパ祖語
2.ハム・セム語族
エジプト語・アラビア語など
3.ウラル語族
ハンガリー語・フィンランド語など
4.アルタイ語族
トルコ語・蒙古語・満州語など
5.シナ・チベット語族
中国語・チベット語など
6.ドラヴィダ語族
インドの土着語
7.南アジア(オーストロアジア)語族
カンボジア語など
8.南島(オーストロネシア語族)
インドネシア語・ニュージーランド語・ハワイの土着語など
7.国語(日本語)系統論
1.北方説・・ウラル・アルタイ語族-藤岡勝二・亀田次郎-
a.語頭に子音の二つ並ばないこと(母音調和)。
b.r音が語頭に立たないこと。
c.冠詞のないこと。
d.文法上の性のないこと。
e.動詞の変化の性質。
f.語尾の接辞の性質。
g.代名詞の変化のないこと。
h.語の関係を示す助詞が後につくこと。
i.助動詞のhaveのようなものがないこと。
j.形容詞に比較を示す変化のないこと。
k.問の文章の語序が肯定文と変わらないこと。
l.接続詞の使用が少ないこと。
m.文章成分の配列の順序。
n.関係代名詞の存在しないこと。
2.琉球語同系論・・チェンバレン・服部四郎
3.朝鮮語同系論・・アストン・白鳥庫吉・新村出
4.騎馬民族説・・江上波夫・・中国語・蒙古語
5.アイヌ語同系論・・梅原猛
6.南方説・・大野晋・・タミル語
8.言語類型論(共時的)・・語形変化(形態的)・語順(語彙的)・・対照言語学
1.語形変化の視点
a.孤立語・・語順が文法関係を示す。
(例)中国語・ベトナム語・タイ語
b.屈折語・・名詞や動詞の末尾の変化によって文法関係を示す。語順が自由。
語形変化。
(例)ギリシア語・ラテン語・ロシア語
c.膠着語・・助詞・助動詞が付着する。
(例)朝鮮語・トルコ語・フィンランド語
d.抱合語・・一文が一語
(例)アイヌ語・アメリカインディアン語
(参考)
日本語・・膠着語の要素が強いが、屈折語の要素も見られる。
英語・ドイツ語・・屈折語の要素が強いが、孤立語の要素も見られる。
2.語順の視点・・グリーンバーグの語順の調査
SOV(50%)・SVO(40%)・VSO(10%) cf.VOS(マダガスカル)・
OVS(稀)・OSV(稀)
(参考文献)
ソシュール(1972)『一般言語学講義』(小林英雄訳)岩波書店.
チョムスキー(1980)『言語と精神』(川本茂雄訳)河出書房.
服部四郎(1999)『日本語の系統』岩波文庫.
町田健(1999)『言語学が好きになる本』研究社.
町田健(2000)『生成文法がわかる本』研究社.