「ら抜けことば」

 こんばんは。今回は、間違いの多い「ら抜けことば」「れ足すことば」「さ入れことば」を扱いたいと思います。
 近年、一般化しつつある「ら抜けことば」と呼ばれるものがあります。例えば
  ×見れる(正しくは「見られる」)
  ×来れる(正しくは「来られる」)
などがあげられますが、
  〇読める
  〇書ける
などは「可能動詞」として正しい用法として認められています。しかし、このあたりを誤解して、
  ×読めれる(正しくは「読める」)
  ×書けれる(正しくは「書ける」)
などのように「れ」を入れてしまう「れ足すことば」と呼ばれるものも発生してきています。
また、「―させていただく」をあまりに強調しすぎた結果、
  ×読まさせていただく(正しくは「読ませていただく」)
  ×書かさせていただく(「書かせていただく」)
のような「さ入れことば」と呼ばれる誤用も出現しています。
なぜ、このような誤用が起きるのでしょうか。小学校や中学校で現代の話し言葉を扱う、「口語文法」の時間があるはずなのに、正しく機能していないのでしょうか。試しに、手元の辞書や教材を見てみます。まず、「れる」「られる」については、
「受身・尊敬・可能・自発」の意味を示す。「れる」は五段動詞の未然形、サ変動詞の未然形「さ」につく。一方、「られる」は動詞上一段・下一段・カ変・サ変・助動詞「せる」「させる」の未然形につく。
と書かれています。
 「可能動詞」については、
可能の意味(「―できる」という意味)を合わせ持った動詞。特に五段活用の動詞を下一段に活用させたもの。「書ける」「歌える」「読める」など。「来る」や「着る」「投げる」などの一段活用動詞にも広がりつつある。
と書かれています。
 「せ(「せる」)」「させ(「させる」)」については、
使役・謙遜(「―せていただく・―せてもらう」「―させていただく・―させてもらう」の形)・高い尊敬(「せられる」「させられる」の形)の意味を示す。「せる」は五段動詞の未然形、サ変動詞の未然形「さ」につく。「させる」は上一段・下一段・カ変の未然形につく。
と記載されています。
 これらの記述から言えることは、正確に記すことと引き換えに、実用的に使うには難しい印象を受けます。この内容で授業をしても、小学生・中学生には難しいと言わざるをえませんし、この内容で書かれている教師用指導書からは、わかりやすく授業することは難しいでしょう。したがって、文法嫌いになるのも当然といえます。思い切って次のようにまとめてみてはどうでしょうか。
  母音がア音+れる・せる
  母音がイ・エ・オ音+られる・させる
  「る」を切っても意味が通る―可能動詞
  「る」を切ったら意味が通らない―ら抜けことば

 このように、チェックすればとてもすっきりと理解できるのではないでしょうか。

敬語の分類−文化審議会の五分類案

 こんにちは。私は、以前、「古典の敬語」についての論文を書いたことがあります。そのときに、謙譲語を細分類することの意義を書いたのですが、同じようなことを現代語でも菊地康人氏が『敬語』(講談社学術文庫)という名著で、書いています。もし興味がある方はお読みください。

 今日は、まず文化審議会の敬語の五分類案をまずみてみましょう。

 文化庁文化審議会は、平成十九年二月に「敬語の指針」を答申して、
①尊敬語
②謙譲語
③丁寧語
の三分類を、五分類にする案を提出しました。
 
 この五分類は、言語学者東京大学教授の菊地康人[きくちやすと]氏の『敬語』(講談社学術文庫)がもとになっています。次にそれを示してみます。

①尊敬語
相手側または第三者の行為・物事・状態などについて、その人物を立てて述べるもの。
②謙譲語Ⅰ
自分側から相手側または第三者に向かう行為・物事などについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。
③謙譲語Ⅱ(丁重語)
自分側の行為・物事などを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。
④丁寧語
話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。
⑤美化語
物事を美化して述べるもの。

 いかがでしょうか?できれば、文化審議会は、きちんと謙譲語の二分類案を取り入れてほしいと思いませんか?これを取り入れて授業をすれば、謙譲語はわかりやすいものになると思います。