夢診断

夢についての考え方

昔から人は、「夢が未来を予言する」と信じてきました。世界各地でも、はるか昔から、夢の中で神のお告げを聞いた預言者の話や、夢に見た出来事がそのまま現実になったという言い伝えもたくさんあります。古代ギリシアの哲学者のプラトンも「夢は予言」と述べました。

また、古代の日本人は「相手が自分に想いを寄せるために、自分がその相手の映像を夢にみる」と考えていました。日本では鎌倉時代に、親鸞聖徳太子から受けた夢のお告げ(磯長(しなが)の夢告(むこく))によって、浄土宗の法然に師事することになり、後に、浄土真宗を開いたとされています。さらには、明恵が世界最古の夢日記を書き、夢を活かして人生を歩んでいたことも有名です(河合隼雄明恵‐夢に生きる‐』講談社文庫)。江戸時代には、正月二日の夜に、「一富士二鷹三(いちふじにたかさん)茄子(なすび)」の順に初夢をみると縁起がよいといわれ、その年の初めに見る夢によって、一年の吉凶を占う「初夢合わせ」も信じられるようになりました。また、神様仏様や亡くなった人が夢に出てくることを「夢枕に立つ」といったりもします。

スピリチュアルの世界では、人間は夢をみているときには、幽体離脱しているので、あの世の世界に行ったり来たりしていると考えています。たとえば、自分のことを気にかけてくれた人物に夢の中でみるというのは、寝ているときに実際に幽体離脱して、その人物と会っているというわけです。ただし、「思い癖」のときもあるので、「すべてが幽体離脱」というわけではありません。また、占い師の視点は、この夢のときにはこういう現象が起きたという、「亀」「トイレ」などのように伝承されてきたものを経験的に分類しています。これらは、民俗学的で読んでいて面白いものです。エドガー・ケーシー・中川穣助・外林大作・西谷泰人氏の著作などが面白く読めます。

夢には二つの意味があります。一つは、将来実現させたいという願いを心の中に思い描くことであり、もう一つは、眠っているときに視覚映像を見ることです。夢は、潜在意識(無意識)の中から生まれてくるものであり、潜在意識には、体験や学習によって過去の影響が記憶や情報として詰まっています。その潜在意識の中身を、はっきりと目に見える形にして(映像化・視覚化)、あらわしているのが夢であり、掌に見取り図のような形にしてあるのが手相だと、西谷泰人氏は述べています。

また、夢は正夢(まさゆめ)と空夢(そらゆめ)に分類できます。正夢は見た夢の内容が本当に現実の世界で起こるもので、空夢は現実の世界とは何の関連もないものをさします。言い伝えによると、夢のお告げは三日間が有効期間であり、よい夢は三日間は人にしゃべらず、悪い夢はすぐに人に話してしまったほうがよいそうです。おそらく、「話す」は「離す」につながるという言霊思想につながるものと考えられます。

一方で心理学・生理学では、1900年にオーストリア精神科医のジグムント・フロイト『夢判断』によってはじめて提唱され、『夢判断』では、「夢は意識への王道である。心の状態や無意識の世界が形となって夢に表れる」と考えてきました。フロイトの考え方をまとめると、「夢は、昼間の生活でみたされない願望を、夜になってみたすという役割をはたす」となります。これは、いわゆる「思い癖」といわれている欲望などを知るには、たいへん効果的であるといえます。また、ユングは、「夢は未来を予知し、過去や未来からのアドバイスを送っている」と述べました。

作家で精神科医の、なだ・いなだ氏は、「人間は、地球の表面をほとんどくまなく知り尽くした。いまや、われわれの関心は、宇宙にまで向けられている。ところが、地球の内部は、びっくりするほど知られていない。それ以上に知られていないのが、心の地殻の内部だ。心の地殻の内部には、われわれも気づかない、欲望や不安の溶岩が渦巻いている。夢とは、その溶岩が、地殻の内部から噴出したものなのだ。だから夢を調べてみれば、人間の心の底を知ることができる」(外林大作著・光文社刊『夢判断』の推薦文より)と述べています。

日本で夢の研究で知られているのは、外林大作・秋山さと子河合隼雄などです。特に、秋山さと子女史は、PHP文庫から出版した本のシリーズで、ユングの考え方を導入した視点で、応用しやすく夢を解説しています。

このように考えると、「スピリチュアルな夢判断」、「占い師の夢判断」、「心理学者の夢判断」は、それぞれ真実を示していることになります。夢について、これら三つの視点があることを知っておくとよいでしょう。ある1つの考えだけでは、どうしても偏りがでるので好ましくありません。

次に、夢の効果的な活用法について考えて見ます。夢の暗示するものを知っていると、あらかじめ起きる事柄を予知したり、現在の自分の中での問題点が明確になったりします。夢の中で意図的に回避することができるということです。たとえば、夢の中で暖かいご飯を食べる夢はよい夢ですが、夢の中で冷たいご飯がでてくるのはよくない夢です。もし、夢の中で冷たいご飯が出されたら、食べないことです。このように、夢判断の知識があれば、夢の中で軌道修正できるのです。また、健康との関わりでは、夢の場面が暗いところから明るいところへうつる場合には健康状態がとてもよく、逆に、暗いところからなかなか明るいところにうつらない場合には、体の調子があまりよくないとされています。医学博士の栗田昌裕氏は、「カラーの夢をみるのは、新陳代謝が活発なときなので健康状態がよい」と述べています。シカゴ大学のクアイトマン教授は、8時間の睡眠であれば、3から5回ずつ、合計2時間は夢を見ているという調査を発表しています。夢を見ても忘れてしまう体質の方は、毎朝、見た夢を思い出すようにしてみると、だんだんと見た夢を覚えていられるようになります。また、夢は、その日か翌日(少なくとも2週間以内)に起こることを示しているといわれています。

人のような高等脊椎動物が睡眠状態にあるときは、「レム睡眠」(まぶたの下で眼球が激しく動いている状態)と「ノンレム睡眠」(まどろんでいる状態から熟睡している状態の4段階)という二種類の睡眠が、約1.5時間(90分)ごとにたくみに繰り返されて、一晩の睡眠が構成されています。このうちの、「レム睡眠」状態のときに夢を見ているようです。

近年では、「明晰夢(めいせきむ)」が注目されています。「明晰夢」とは、睡眠中に、「これは夢である」と自覚しながら見ている夢のことで、コントロールできる夢のことです。