2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『万葉集』四十八の訓み下し

今回は、万葉集の読み方で説の分かれるものを紹介します。私の書いた卒業論文の中の一部を掲載いたします。○東野炎立所見而反見為者月西渡(『万葉集』・四八)の訓み下し 賀茂真淵はこの歌を ひむがしののにかぎろひのたつみえてかへりみすればつきかたぶき…

江戸時代の貨幣の価値

○江戸時代の貨幣の換算 江戸時代の貨幣は、「金」「銀」「銭」が基本です。江戸は金が中心で、上方は銀が中心でした。金・銀・銭の交換レートは変動相場ですが、「金一両=銀六十匁=銭四貫」となっています。 「金」は「両」「分(ぶ)」「朱」にわけられ、金…

俳諧と俳句

○俳諧と俳句 「俳諧連歌」と呼ばれるものがあります。「俳諧連歌」は「滑稽な連歌」のことで、「俳諧」と略されます。この俳諧は芭蕉によって芸術的に完成されました。 ところが、明治時代になると正岡子規が、俳諧連歌の芸術性を完全否定しました。そして、…

「玉の緒」ということば

「玉の緒」 和歌に出てくることばで、「玉の緒」があります。「玉の緒」は、「玉を貫いた紐」のことですが、和歌では「魂を肉体につなぎ止めておく紐」のことで、「命」をさします。特に「はなかい命」をさします。百人一首にも収録されている「式子内親王」…

「連歌」について

○「連歌について」 「連歌」には、「短連歌」と「長連歌(鎖連歌)」とがあります。「短連歌」は「五七五(上の句・長句)」と「七七(下の句・短句)」とを二人で分担して詠む形式です。これが「長連歌(鎖連歌)」になると、複数で分担して詠むこととなり…

「右近の橘、左近の桜」

「右近の橘、左近の桜」 「右近の橘、左近の桜」ということばを聞いたことがありますか?平安時代、近衛府(天皇直属の軍隊)には左右二府があり、左近の軍隊が整列する脇には桜が、右近の軍隊が整列する脇には橘がありました(現在の雛祭りも同様です)。そ…

三夕(さんせき)の歌

「三夕の歌」 『新古今和歌集』に、「三夕(さんせき)の歌」と呼ばれている末尾が「秋の夕暮れ」の体言で終わる歌があります。秋は「実りの秋」「収穫の秋」で「豊作」の意味もありますが、冬に向かうので「人生の悲哀の時節」や「はかなさ」などの「哀愁」…

五大幸福論

「五大幸福論」 幸福論について述べた著作の中で世界的に水準の高い「古今東西の幸福論」として、哲学者の鷲田小弥太氏は、五つの幸福論を紹介しています。日本人のものが含まれているところに大きな特徴があります。 ○プルタルコス『モラリア』 ○スマイルズ…

記憶について

○記憶について 「記憶力」について興味を持ったことはありますか?私は、たいへん興味を持った時期があります。それは、中学・高校のころでした。私は、好きな科目しか勉強しないので、嫌いな科目はほとんど手をつけませんでした。結果的に学問はどの科目で…

パスカルの『瞑想録』

○パスカルの『瞑想録』 パスカル(1623―1662)は、合理主義と神秘主義の両面を持つモラリストです。パスカルは、精神を「繊細な精神」(直観)と「幾何学的精神」(理性)とに分けました。デカルトの合理論では、「幾何学的精神」(理性)だけを重視しすぎた…

ヒルティに学ぶ心術

おはようございます。 岩波文庫から出ているアランの『幸福論』とヒルティの『幸福論』があります。私は、ヒルティの『幸福論』のほうを好んでいます。 ヒルティは、仕事をまじめに行うことが幸福につながると説いているからです。その愚直なまでの勤勉さに…

デカルトの『方法叙説』

○デカルトの『方法叙説』 デカルト(一五九六―一六五〇)は、近代哲学の父と呼ばれています。デカルトは、どんなに疑ってうも「疑っている私の意識」は疑いえない(存在する)としました。プラトンのイデア論(目に見える現実は仮の姿)を再興する一方で、物…

『今昔物語集』の「兵のこころばえ」について

おはようございます。今回も私の書いたレポートを紹介します。『今昔物語集』巻二十五にみる「兵の心ばえ」について 『今昔物語集』巻二十五本朝付世俗は、平将門・藤原純友の話で始まり、前九年の役・後三年の役の話で終わる武士譚である。これらの間にはさ…

『太平記』叙述の思想的立場

こんにちは。 戦前はよく読まれていたのに、戦後は読む機会の少なくなった作品のひとつに、『太平記』があります。かつて、私が書いたレポートのデータが残っていたので、掲載してみます。『太平記』叙述の思想的立場 『太平記』は、南北朝時代の軍記物語で…

端午の節句

「五月五日」は「端午の節句」で「こどもの日」でしたね。もともとは、菖蒲を飾り、邪気除けや長寿を願うものでした。それが江戸時代になると、「勝負」や「尚武」と漢字が当てられて、男の子の祝いとなりました。その結果、鯉のぼりなどを飾るようになりま…

『平家物語』の語る木曽義仲の人物像

おはようございます。今回は、私が学生のころに書いたレポートを掲載します。歴史学者の石母田正氏の影響を受けて書いたレポートです。興味のあるかたは、石母田正(いしもたしょう)『平家物語』(岩波新書)を読むと歴史と文学についての視点が養われます…

連体格の「つ」

○連体格の「つ」 古典の和歌で、「沖つ島守」という言葉がよく出てきます。この「つ」は「の」と口語訳されるもので、「沖の島の番人」というような意味合いになります。上代に使われたこの連体格の「つ」は、『万葉集』の例をみると、 「目つ毛」(目の毛、…

名前の音響と病気との関係

「名前の音響と病気との関係」 名前の最初の音で、身体の弱い部分を推定する方法があります。音の響きが人体に与える影響という視点で考えると、興味深いものがあります。 (あ)呼吸器系・肌(い)頭・顔(う)肩・腰(え)胃・肝臓(お)婦人系・膀胱 (か…

ドラッカーについて思うこと

最近、ドラッカーの経営哲学を採用して、業績を伸ばしている企業が注目されています。昔から、プロの経済・経営学者からは疑問視されていますが、実際に現場で威力を発揮するものとして、シュンペーター、ハイエク、ドラッカーは人気があったようです。特に…

『保元・平治物語』における源義朝について

こんばんは。データを整理していたところ、私が学生のころに書いたレポートがでてきました。担当の杉本圭三郎先生の評価はAで、お褒めの言葉が書かれてありました。そこで、参考までにそのレポートを掲載してみます。 『保元・平治物語』における源義朝につ…

森鴎外の遺書

「森鷗外の遺書」 森鷗外は、文学者でもあり陸軍の軍医の最高峰まで出世した人物です。その森鷗外の遺書が有名です。世俗のものとは、一切関わらないで「森林太郎」として死にたいことを書いたものです。死後発表された森鷗外の遺書を永井荷風は絶賛し、『断…