高橋龍雄の受身の論
高橋龍雄(1906)では、「被性の助動詞」として「れ・れる・れゝ」「られ・られる・られゝ」として、次のように述べている。
四段活の動詞の下には『れ、れる、れゝ』が付き、其他の動詞の下には『られ、られる、られゝ』が付きます。
私は人に笑われました。
私は人に誉められました。
あの人は先生に叱られました。
毎朝起こされる時は眠うございます。
私の字は、人に見られると、困ります。
サ行変格に『られ』が付く時は、約音になります。
攻撃しられました。 攻撃されました。
罵倒しられました。 罵倒されました。
口語を対象とし、使用頻度の高い「れ・られ」という連用形での例文が中心となっている(7例中5例)。動作主はすべて「二格」で示されている。「私の字は、人に見られると、困ります」の例は、広義では非情の受身の例と考えてよいであろう(注)。また、「私は人に誉められました」の例は、必ずしも受身文が迷惑の受身とはならないことを示している。約音については、通常は「せられる」が「される」になる現象を示すと説明されるが、「しられる」が「される」としている点が、他の日本語教科書とは異なる。
(注)
狭義では自分の所有のものなので、完全な非情の受身とは言い難い。