難波常雄の受身の論

難波常雄(1906)では、「れる・られる」を「被動ノ助動詞」としており、「両方トモ、他ノ物ニ其ノ動作ヲ為掛ケラレル意味を表ハシマス。『人ニ憎マレル』『世ニ捨テラレル』ナドノヤウニ用ヒマス。」と述べている。そして、四段活用に「る」が接続し、その他の動詞に「らる」が接続することを述べ、語尾変化として次のように四つをあげている。

第一変化     第二変化     第三変化     第四変化
命令法      中止法      終止法・連体法  前提法
レ        レ        レル       レレ
ラレ       ラレ       ラレル      ラレレ

サ行変格動詞に「られる」が接続した「せられる」が、「される」という約音になる現象について「『セ』『ラ』ノ二音ガ合シテ、『サ』トイフ一音ニナッタノデス」述べ、次の例をあげている。

私ハ試験ヲ為ラレル。
私ハ試験ヲサレル。
アノ人ハ皆サンニ、攻撃為ラレル。
アノ人ハ皆サンニ、攻撃サレル。

他の近代の日本語教科書もこの「せられる」が「される」になる現象について必ず触れているのは大きな特徴である。