真のプラス思考とは
○真のプラス思考について
成功哲学では、「プラス思考(ポジチィブ・シンキング)」を大切にします。しかし、反省・内省する気持ちがないと、破綻しますよね。それは多くの企業でもよく見られることです。メキキの会の会長で心理学者でもある出口光氏は、「マイナス思考の方が成功する」というまったく逆のことを述べています。デール・カーネギーも最悪の事態を覚悟してから物事を行うほうがよいと述べています。
齋藤一人という億万長者がいますが、彼は「ついてる・うれしい・楽しい・幸せ・感謝します・ありがとう」という言葉を唱えるとともに、玄関・トイレ・風呂の掃除や靴を磨くという行為で、プラス思考にする方法を説いています。また、医師の塩谷信男氏は呼吸とプラスイメージをする方法を『自在力』(サンマーク文庫)で書き記しています。
ここでプラス思考とマイナス思考を組み合わせた稲盛和夫氏の言葉を紹介します。それは、
「楽観的に構想を練り、悲観的に計画し、楽観的に実行する。」
という言葉です。プラス思考で自由な発想を大切にしながらも、計画の実行に当たっては緻密に練り上げ、最悪の事態まで想定し、スタートするときには楽観的に行うというものです。これがまさしく、「真のプラス思考ではないでしょうか。カーネギーの『道は開ける』に通じるものがあります。「真のプラス思考の姿」は、この稲盛和夫氏の言葉に集約されている気がします。
また、本田健氏も重要なことを指摘しています。本田健氏は、『強運を呼び込む51の法則』(大和書房)の中で、「ポジティブすぎる人は運を逃す」として、
「たしかに、前向きに物事をとらえる人は、運をうまく引き寄せることができるように思えます。しかし、ポジティブになりすぎると、人はまた運を逃してしまうのです。・・<中略>・・前向きと無神経とは違うのです。物事には、必ず、ポジティブな面と、ネガティブな面の両方があります。その両サイドを見られるようになると、物事の本質がつかめてきます。ポジティブすぎる人は、どうしてもそのあたりが抜け落ちているのです。その態度が、繊細な人、感受性の鋭い人には、無神経に見えて、嫌われてしまいます。自分では、知らないうちに、運を逃してしまうのです。」
と述べています。やはり、楽観的に発想しても、たえず反省する心が大切でしょう。
逆に、ネガティブ思考でも成功できるということを述べているのが、出口光氏と森川陽太郎氏です。特に森川陽太郎氏は、『ネガティブシンキングだからうまくいく35の法則』(かんき出版)で詳しく検討しています。著者の森川陽太郎氏は、元サッカー選手ですが、怪我のため若くして引退し、現在はメンタルトレーナーとして、女子サッカーチームやミス・ユニバース・ジャパンファイナリストを指導しています。以下に書評に書かれている概要を示してみます。
1.OKラインを下げて「自己肯定感」を持つ
人には「いつかこのレべルを達成したい」という目標とは別に、「いま自分自身がこのレべルを満たしているならOK」と自己肯定感が持てる基準があります。私はそれを「OKライン」と呼んでいます。(中略)OKラインは「自分が確実にできること」に設定しておくことが大切です。確実にできることを積み重ねることで得られる「自己肯定感」によって、実力を発揮し続けることができるからです。
2.「自分で出せる成果」に焦点を当てる
大きな目標を掲げて努力をしている人は、いつしか「望む結果が出ないこと」に対して自分を追い込み続けてしまうサイクルにはまります。結果、挫折感を持ったり、義務感のようにただ努力するという悪循環にはまりがちになります。これでは、「自分のやりたいことをやろうとする」という前向きな行動が、ちっとも楽しいものになりません。夢を実現するための行動だったはずが、ただ辛さを感じさせるだけのものになってしまうでしょう。だからもっと「自分で出せる成果」に焦点を当て、それにふさわしい努力量に自分の日常の取組みを調整してみてはどうかと思うのです。
3.自分の本当の感情に気づく
本来、感情には「いい」も「悪い」もありません。まずは、問題に直面したときの自分の感情が理解できなければ、問題そのものを乗り越えることもできなくなってしまいます。たとえば「成績が落ちて悔しい」といった場合を考えても、「できるはずの成果が出せなかった自分にはがゆい思いをしているのか」、それとも「ライバルに負けて、自尊心が傷つけられたことにショックを感じているのか」によって、対処の仕方は変わってきます。そういった機会に自分の感情に気づき、それを受け止めるためには、感情を表す言葉を知る必要があります。
4.不安を持ったまま対処することに慣れる
学校のテストを思い出せば、勉強のできる人は、むしろ前日はリラックスして、「早いうちに就寝して翌日に備えよう」といったことをしていたはずです。前日に徹夜して知識を詰め込んだところで、本番で頭が働かずその知識を引き出せないとしたら、何の意味もありません。結局は、ただ安心感が欲しいからやっている行為にすぎないのです。一度そうした「あがき」を止めて、不安要素を持ったまま本番に臨んでみましょう。必要なことは、それまでの長い歳月ですでに身につけているはすです。最初はドキドキするかもしれませんが、「不安を持った状態のままで対処することに慣れていけば、結果を出すためになすべきことは次第にわかってきます。
5.「できなかったこと」にちゃんと向き合う
サッカーのチームでも、じつは負け続けているチームに限って、負けた瞬間から「次の試合は、絶対勝つぞ」などと気持ちをすぐ前向きに切り替えてしまいます。聞いている側には、頼もしく感じられるのですが、「負けたこと」がアッサリと心のなかでスルーされてしまっているのです。悔しさや辛さといった感情からも、敗因をよく分析することからも逃げてしまっているから、いつまでも強くなれないのです。
6.「感情の経験値」を増やす
ネガティブなことまでを含めて「予想外をなくす」ということに関して、有効なのは「感情の経験値を増やす」トレーニングです。実際にこれから起こす行動の中で感じるであろう感情を、あらかじめ具体的にイメージして書き出しておくのです。行動した後に書いたものを振り返り、「実際にはどんな感情を感じたのか」も書き出していきます。その違いを把握することで、行動を起こしたときに感じる感情について「予想外」の部分を減らすことができるのです。
7.安心感を得るための努力をなくす
頑張った「過程」を評価されたいというクセがついてしまっていると、いつまで経っても実力は発揮できません。「過程」よりも「結果」に目を向けさせるため、私は「あえて練習量を減らすように提案したり、努力をさせないようにする」ことを、しばしばアドバイスしています。たとえば極端な場合だと、100回やらないと安心できなかった練習をわざと1回で終えたり、10時間やらないと安心できなかった練習をあえて5分で切り上げることもあります。そのことで「安心感を得るための努力」をやめてもらうわけです。