食と永井荷風

永井荷風(1879―1959)は、興味深いエピソードの多い人物です。以前、知人の世界史の講師の方と(その方の著書として『高校の世界史を復習する本』という国家公務員一種試験のバイブル的な参考書があります)、浅草にあるアリゾナという店と京成本八幡にある「大黒屋(だいこくや)」という店に行ってきました。文豪、永井荷風がよく食べに行っていた店です。永井荷風は東京生まれで、アメリカ、フランス滞在を経て、『あめりか物語』で好評を得ました。その後、反自然主義作家として人気を博し、1952年文化勲章を受賞しました。代表作に『腕くらべ』『濹東綺譚』『断腸亭日乗』などがあります。以下、簡単にエピソードをまとめてみます。
(エピソード)
慶應義塾大学教授(文学部の国文科を創設するため、森鴎外上田敏の紹介によって教授に就任。30から36歳まで勤務)を辞めた理由
1胃腸をこわし、休講が多くなったから(死因も胃潰瘍による心臓麻痺)。
2授業はきちんとやるが、私生活では、芸妓を身請けしては捨てる放蕩三昧で、他の教授から批判された。
永井荷風の好んだ店で今でも営業している店
1大黒屋―カツ丼(臨終の前の日も食べたらしい。八幡にある自宅の近く。空襲で麻布の本宅が焼けた後、晩年、市川市八幡のボロ屋に住んだ)
2浅草アリゾナ―エビフライ・牛肉と野菜を煮込んだビーフシチュ―
〇多くの女性
女と別れるとき弁護士を通じて手切れ金を支払う
「女とできるときに別れるときの金を考えている」
(生まれながらの金持ちで)17歳で吉原に遊び、上海の享楽を知り、渡米して娼婦イディスとの交情が深まる。