追悼・井上ひさし

「追悼・井上ひさし
 マルチな才能の作家・劇作家の「井上ひさし」氏がなくなりました。少し思い出があるので、書いてみたいと思います。私が始めて日本語文法に興味を持ったきっかけになったのが、井上ひさし氏の『私家版日本語文法』(新潮文庫)でした。この本は、主な文法研究への手引きにもなっており、この本に出てくる人名のものを次々に読んでいった大学生のころを思い出しました。また、『井上ひさしの日本語相談』(朝日文庫)も面白い本でした。同様に近代文学の理論は、筒井康隆氏の『文学部唯野教授』(岩波現代文庫)に出てくる人名のものを読んでいきました。
 私が、井上ひさし氏の話を直接聞いたのは、大学院特別研究生のころでした。東洋大学のシンポジウムで、小森陽一氏と井上ひさし氏とが近代文学についての積極的な発言をしていて、寺田透を批判していた記憶があります。話も軽妙で、ユーモアがあり、会場が笑いに満ちていました。人が亡くなると、才能もあの世へ持っていってしまうので、惜しいことです。