西田幾多郎の『善の研究』

西田幾多郎善の研究
西田幾多郎の有名な著作、『善の研究』は、大正時代から昭和初期にかけてベストセラーとなった、すばらしい本です。何度読み返してもその内容に圧倒されます。善や美は、予断を排除した純粋経験による知情意の一致であり、自然摂理に従うべきだと説きました。西洋哲学の主観と客観の分離を批判し、両者が未分化にある状態を「純粋経験」としました。その純粋経験が自己意識の絶対矛盾自己同一の弁証法的運動によって充実、完成することを「善」(真善美)としました。
西田幾多郎(一八七〇―一九四五)は、石川県の生まれで、鈴木大拙とも学友でした。四高から京都帝国大学の哲学の教授になりました。仏教思想の影響が強い人物ですが、フッサール現象学を日本に紹介しました。幅広い人材が集まったことでも知られ、田辺元三木清、戸坂潤、高山岩男高坂正顕などが知られています。また、ベルグソンキルケゴール、ウイリアム・ジェームズ、ヘーゲルスピノザなどの他説も取り入れ、自在に自分の説として変換しました。