受験での和歌の扱い

今回は、受験での和歌の扱いをまとめてみました。


「受験での和歌の扱い」
高等学校の現場で用いられ、高等学校と大学教育とをつなぐ受験対策の役割を果たした、村上本二郎氏と石井秀夫氏の著作の記述をみてみることとする。

○村上本二郎(1966)『文法中心・古典文解釈の公式』学研
「枕詞」
1原則として五音からなり、一定の語を導き、修飾または句調を整えるのに用いる。
2枕詞も、訳の上に表わす場合がある。
「序詞」
1七音以上からなり、ある語句を導くための前置きとして用いられる。
意味内容の面から関係を持つもの・音調の面から関係を持つもの・掛詞としての用法の上で関係を持つもの
2序詞は、すじのうえには関係はないが、背景・気分の上では意味を持つ。
「掛詞」
1掛詞は、一つのことばに二つの意味を持たせ、技巧的に修飾するはたらきをする。
2掛詞は、二つの意味を訳のうえに表わす場合がある。
3縁語は掛詞と併用されることが多い。
石井秀夫(1985)『古文読解のための文章吟味の公式』聖文社
第十五章 各種の修辞に関するもの 
公式157ある語句を導く三から五音の修飾句は枕詞
公式158枕詞は初句か第三句
公式159ある語句を導く七音以上の修飾句は序詞
公式160序詞の三通りのでき方
公式161枕詞・序詞は散文にも用いられる
公式162一語に二通りの意味を含ませる修辞は掛詞
公式163掛詞は「単独」と「他の修辞」の二種
公式164中心語句に関係ある語を使う修辞は縁語
公式165物名を隠して歌中に詠み込む修辞はもののな
公式166和歌の折句・沓冠
公式167和歌で漢字を分解して詠みこむものは離合
公式168古歌を自分の和歌に借用する技巧は本歌取り

村上本二郎(1966)の説明は比較的オーソドックスで、伝統的に行われている和歌の修辞に関する一般的な説明といえる。それに対して佐伯梅友の門下生であった石井秀夫(1985)の方は、公式の分類もたいへん細かく、修辞技巧について細かく取り上げている印象を受ける。