フランクリンの13徳

「ベンジャミン・フランンクリンの13徳」
ベンジャミン・フランクリン(英・1706-1790)は、アメリカ合衆国の政治家・科学者・啓蒙(けいもう)思想家です。ボストンの職人の子で、印刷出版業で新聞を発行して、「貧しいリチャードの暦」の発行(ユーモアをまじえた実用的処世訓)で成功したのち、七年戦争(1756-1763)ではイギリスのために戦い、イギリス本国の植民地圧迫が強まると渡英して印紙条例(1765)の撤廃交渉に成功、1775年には代表として第二回大陸会議に出席、アメリカ独立戦争(1775-1783)を指導し、1776年にはジェファソンを助けて「独立宣言」起草委員の一人になり、アメリカ独立に多大な貢献をしました。また、駐仏大使となり米仏同盟の結成とフランスの参戦を実現、1783年パリ講和条約の調印に加わりました。帰米後、ペンシルバニア州知事となり、1787年の「アメリカ合衆国憲法」の制定に最長老として参加し、意見の調停に努めました。また奴隷廃止運動にも参加しました。現在でもアメリカの100ドル紙幣の肖像画として描かれています。また、凧の実験で雷が電気であることも証明し、避雷針(ひらいしん)を発明した科学・技術の方面でも業績をあげました。
勤勉性、探究心の強さ、合理性、多くの公共事業などの社会活動への参加、己をふくめての権力の集中を嫌い、その多彩な活躍と実際的な性格から「典型的アメリカ人」と呼ばれています。彼の啓蒙的自叙伝『フランクリン自伝』は、明治維新後の日本で勤勉や立身出世のモデルとされ、成功のバイブルとして広く読まれました。現在でも読まれており(日本では岩波文庫中央公論社会から日本語訳が出版されています)、その中で「13徳」が、毎日寝る前にフランクリンが反省していたものとして紹介されています。地球物理学者の竹内(たけうち)均(ひとし)氏は、東京大学を定年退職してからは科学教育の一環で「ニュートン」を編集し、それまで読んできた哲学、人間学、時間利用方法を紹介していました。その竹内均氏もベンジャミン・フランクリンを尊敬しており、『人生を最高に生きる私の方法』(三笠書房)の中でフランクリンの13徳を実践し推奨していたことでも有名です。以下に紹介してみますので、開運のための生き方のための内省として活用してみるとよいでしょう。
1節制 飽くほど食ふなかれ。酔ふまで飲むなかれ。
頭が鈍るほど食べないこと。酔って浮かれ出すほど飲まないこと。
2沈黙 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
他人または自分自身の利益にならないことは喋らないこと。つまらぬ話は避けること。
3規律 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
自分の持ち物はすべて置く場所を決めておくこと。自分の仕事は、それぞれ時間を決めてやること。
4決断 なすべきことをなさむと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
やるべきことを実行する決心をすること。決心したことは必ず実行すること。
5節約 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなはち、浪費するなかれ。
他人または自分のためにならないことに金を使わないこと。すなわち、無駄な金は使わないこと。
6勤勉 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。
時間を無駄にしないこと。有益な仕事に常に従事すること。必要のない行為はすべて切り捨てること。
7誠実 偽りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出だすこともまた然るべし。
策略を用いて人を傷つけないこと。悪意を持たず、公正な判断を下すこと。発言する際も同様。
8正義 他人の利益を傷つけ、あるいは与ふべきを与へずして人に損害を及ぼすべからず。
他人の利益を損なったり、与えるべきものを与えないで、他人に損害を及ぼさないこと。
9中庸 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思ふとも、激怒を慎むべし。
両極端を避けること。激怒するに値する屈辱をたとえ受けたにせよ、一歩その手前でこらえて激怒は抑えること。
10清潔 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
身体、衣服、住居の不潔を黙認しないこと。
11平静 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失ふなかれ。
小さなこと、つまり、日常茶飯事や、避けがたい出来事で心を乱さないこと。
12純潔 性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、これに耽して頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。
性の営みは健康、または子孫のためにのみこれを行って、決してそれに耽って頭の働きを鈍らせたり、身体を衰弱させたり、自分自身、または他人の平和な生活や信用を損なわないこと。
13謙譲 イエスおよびソクラテスに見習ふべし。
キリストとソクラテスに見習うこと。
フランクリンの『フランクリン自伝』は、二宮尊徳とよく似ている面もあり、二宮尊徳も『二宮翁夜話』を記しています。その内容も類似しています。
フランクリンの名言として、「時は金なり」「天は自ら助くるものを助く」「結婚前は両目を大きく開いて相手を見よ、結婚したら片目を閉じて見よ」などもあります。