心理学と占い
心理学と占いとの関係
心理学と占いとの関係は、密接なものです。特に占い師に多大な影響を与えた本としては多湖(たご)輝(あきら)氏の書いた『読心術』(光文社)をあげることができます。この本は古い本ですが、当時(昭和37年)の最新の心理学の視点から表情やしぐさなどを分析しています。多少の古さは感じますが、古本屋で見つけたら買っておくとよいと思います。また、ユングも夢診断や霊媒についての論文を多数書いています。そうしたことからも心理学者は占いに対して強い関心を持っています。
そもそも東洋の占いの欠点は学問的に統計を取っていないことでした。特に日本で行われていた中国式の手相はまるであたりませんでした。そのために江戸時代を代表する人相家であった水野南北は、頭にきて中国式の手相の本を捨ててしまったというエピソードもあるほどです。水野南北は職業を転々として、いろいろな職業の人相などを徹底的に研究して「南北相法」という人相の体系をつくりあげました。こうして日本では人相が発達することになりました。これはある意味で、日本では人相の統計を取ったということがいえるのではないでしょうか。そして明治時代になると、西洋の学問が入ってくるようになり、西洋流の手相が入ってくるようになりました。その西洋流の手相は、心理学者や医者が人の表情やしぐさ、手相の線の特徴や皮膚の色を統計的に取るようになったことからおこりました。その結果大いに手相も発展したのです。そのため手相の発展としては、心理学の存在を忘れることはできません。占い師に影響を与えた手相の本としては心理学者でもある浅野(あさの)八郎(はちろう)氏の書いた『手相術』(光文社)をあげることができます。この本は多くの読者を獲得しました。浅野八郎氏は専門である心理学を駆使してデータを取り、西洋式の手相をベースに性格分類に注目して体系的に整理しました。
また、筆跡心理学というのも海外では盛んであるのに、日本では遅れていました。日本での筆跡心理学を体系づけたのが、森岡(もりおか)恒(こう)舟(しゅう)氏でした。森岡恒舟氏は書家であり、東京大学の文学部心理学科の卒業でした。そのために、日本の筆跡心理学を創始するにあたって多くの筆跡を集めたそうです。この例なども心理学的な統計を取るという基本的な姿勢があるからこそできたことだといえるでしょう。
また、心理学者の波多野(はたの)完治(かんじ)氏は文章を診断して、心理を読み取るという新しいタイプの「文章心理学」を提唱しました。これも綿密な観察から生まれたものだといえるでしょう。
言語学と心理学との融合した「言語社会心理学」というものもあります。また、ユングの影響により、占星術と心理学とが融合した西洋心理占星術というジャンルもあります。これらは、よさを生かすという点で、カウンセリングや臨床心理士なども利用しています。
同僚の現場の占い師に聞いてみると、「しぐさや表情などから人物像をある程度予測しておいてから鑑定にとりかかる」とよいということを耳にします。こうしたことからも心理学の初歩ぐらいは勉強しておいたほうがよいと言えます。ただ、最近は霊感を用いた前世鑑定や守護霊鑑定などのサイキック(スピリチュアル)能力のある人々も占い師と席を並べて鑑定することが多くなりました。彼らに負けないためにも、技や知識を磨いておく必要があります。占い師は、人の人生を左右したりもします。ですから、どういう占い師に鑑定してもらうかは重要なことです。基本的な条件としては、たとえよくない鑑定結果でも、勇気や希望を与えて人生を前向きにさせてくれる開運のためのアドバイスをしてくれることです。ただ当てるだけの占い師では、それはレベルが低いのです。開運助言があってこそ、占い師なのです。よく占いをやってもらうのを嫌う人がいますが、ひどいことを言われたりしたために、ひどく傷ついているケースも多いものです。みなさんも、よくない結果であっても必ず開運の助言を忘れないようにすることが必要です。本当に力のある占い師の特徴としては、占いをよく研究していますし、どうすれば開運できるかについても絶えず研究しているものです。結果的に運命学というものを意識するのが普通になります。そして、最悪の名前や鑑定結果であっても、うまくいっているケースもあります。その例を見て、開運を研究することが必要です。
逆に現場のカウンセラーや心理学者たちはどうかというと、予測をしたいという欲求があるので、手相や人相などの統計的な占いを勉強しているケースが多いようです。占いもきちんとした統計は取ってこなかったものの、経験的に言えることが継承されていますから、それなりにあたるものなのです。そう考えると占いと心理学とは特に相互補完するものといえそうです。
ここで、よく耳にする「運命学」ということばの定義を考えてみましょう。運命学とは、「運命を創る」(中村天風・安岡正篤などの考え方)という積極的な場合に用いるときと、「運命を受け入れる」(占い的な考え方)という宿命論的な考え方があります。この両方が必要なことはいうまでもないでしょう。つまり、人間には自由意志が与えられているので、運命で決まる部分とそうでない部分があるのです。櫻井秀勲氏によると、「各種の占い」「運命理論」「成功哲学」「心理学」の分野の融合だそうです。これらの分野を学ぶことが大切だと考えるのがよいでしょう。