国語教科書と「ら抜き」「可能動詞」

「ら抜きことば」は、国語審議会では容認されていないため、以下のように平成二三年検定済の中学校国語教科書では、教科書会社の主要五社ともに中学校二年で扱い(光村図書は脚注で可能動詞を補足的に説明)、そのうち三社が可能動詞を本文で立項し、脚注や左注をつけている。

学校図書・・本文で立項
【左注】
◎可能動詞の活用・・全て下一段活用で命令形はない。
◎可能動詞の意味・・「取れる」は「取ることができる」という意味以外に、「自然に取れる」という意味でも用いられる。このように、可能動詞は「自然にそのようになる」という意味になることもある。
教育出版・・本文で立項
【脚注】
可能動詞には命令形はない。
●「話さない」と「話せない」
「話す」に「ない」をつけた形は「はなせない」ではなく、「はなせない」だ。「はなせない」は「話す」の可能動詞「話せる」に「ない」をつけたもの。
●「見れる」は可能動詞か?
可能動詞は、五段活用の動詞から作られる。上一段活用の「見る」や、下一段活用の「出る」を可能動詞のようにした、「見れる」「出れる」という言い方は、一般的とはいえない。
●二つの「切れる」
「切れる」には、他動詞「切る」から可能動詞になった「切れる」と、自動詞の「切れる」とがある。「取れる」「割れる」「裂ける」なども同様に、可能動詞と自動詞との二つがある。
三省堂・・本文で立項
左注・脚注なし
東京書籍・・本文で立項
【脚注】
○可能動詞にならないもの
「食べれる」「来れる」のように五段動詞以外の動詞を可能動詞にすることは、書き言葉では一般的ではない。また、五段動詞でも、「光る」「曇る」「響く」のような動詞は可能動詞にならない。
光村図書・・本文で立項しない。脚注で立項。
【脚注】
♢可能動詞の活用
「・・できる」という意味の可能動詞は、五段活用の動詞をもとにした、下一段活用の動詞である。
・飲む(五段)→飲める(下一段)
・走る(五段)→走れる(下一段)