江戸時代の国語
(解説一)江戸時代の国語
江戸時代
○二元対立の時代
口語と文語の分裂・武士階級と町人階級のことばの差・関東方言と関西方言・
○江戸語の成立
一享保頃成立(一七一六―一七三一) 二宝暦頃成立(一七五一―一七六四)
音韻
○エ・オの発音・・je・wo→o
○開音・合音の区別がなくなる
○ジzi・ヂdiとズzu・づduが現在と同音になる
○くわkwa・ぐわgwa→かka・がgaへの直音化
○ハ行子音が軽唇音fから喉音hへ
○上方と江戸での発音の異なり
ヒ→シ
アイai・オイoi→エーe
持っては・行かずは→持っちやあ・行かざあ
語彙
○階級意識の差→言葉の差(町人ことばと武士ことば)
○おかみさん・御新造さん(町人)・おくさん・おくさま・貴殿(武士)
○方言・・『物類称呼』
○遊里ことば・芝居ことば・市場ことば
○オランダ→自然科学、中国→漢語・仏教関係
文法
○二段活用の一段化・ナ変・ラ変の四段化→活用の種類が五種類へ
○係り結びの崩壊
○終止形と連体形の同一化
○已然形から仮定形へ
○命令形
上げい→上げろ、せい→しろ
○形容詞の仮定形「―くは」「―ければ」→「ければ」
○音便
ウ音便(上方)・促音便(江戸)・撥音便
○上方と江戸での動詞の異なり
「借る」・「足る」・「染む」・「飽く」(四段)・・上方
「借りる」・「足りる」・「染みる」・「飽きる」(上一)・・江戸
○助動詞・助詞
う・よう・らしい・ます・そうだ・ようだ・せる・させる・れる・られる
だ・ない・から(江戸)
ぢや・ぬ・なんだ・さかい(上方)
きり・だけ・しか・くらい・でも・たり・し・で・のに・ので
な・さ・ぜ・ぜえ・わい・わ・よう・いな・わいの・いの・いのう・もの・ね・ねえ・さ・なあ
○尊敬
お―あそばす・いらっしゃる・ござる・しやる・さしやる・さんす
○謙譲
お―申す
ござります
○丁寧
ます
(解説二)日本文法研究史
第一期 中世以前(平安時代末まで)・・文法意識の萌芽時代
中国語との接触
第二期 中世(鎌倉・室町時代)・・文法意識の確立時代
和歌・連歌を詠むための規範としての文法
藤原定家・宗祇
第三期 近世(江戸時代)・・文法研究の本格化と体系的文法研究の確立時代
前期
契沖
後期
富士谷成章・本居宣長・鈴木朖・本居春庭・東条義門・鶴峰戊申
第四期 近代・・言語学の影響なども受けながら、文法理論が発展する時代
大槻文彦・橋本進吉・松下大三郎・山田孝雄・時枝誠記
佐伯梅友・北原保雄・渡辺実
森重敏・川端善明・尾上圭介
金水敏・近藤泰弘
※西洋人の日本語研究
『日葡辞書』、ロドリゲス『日本大文典』
ホフマン、アストン、チェンバレン、サンソム