岡倉由三郎の著作

山東功(2002)は、明治期の転換期を明治5(1872)年の学制頒布を分岐点として措定し、『明治以降教育制度発達史』(教育史編纂会編)に修正を施し、以下のような三期に区分している。

第1期 明治元(1868)年−明治4(1871)年  太政官期    国学者主導の言語研究
第2期 明治4(1871)年−明治19(1886)年  学制頒布・教育令期 洋学者主導の文法研
第3期 明治19(1886)年以降  学校令期    近代言語学の直接移入
(p.96)

この中で岡倉由三郎が日本語学の著作を発表したのは、第3期の近代言語学の直接移入の時期にあたる。山東功(2002)は、以下のように述べている。

この時期は大槻の他にも落合直文関根正直、岡倉由三郎など、数多くの学者達が文典を著しているが、それらの多くは初等教育を目的とするよりも、文法を教えるものを対象とした師範学校教授用のものである。(p.102)

岡倉由三郎の日本語学の著作としては、日本語学史の中では、以下のものがあげられる。

岡倉由三郎(1890)『日本語学一班』明治義会
岡倉由三郎(1891)『日本新文典』冨山房
岡倉由三郎(1897)『日本文典大綱』冨山房
岡倉由三郎(1901)『新撰日本文典 文及び文の解剖』宝永館書店
岡倉由三郎(1905)『新撰日本文典 文及び文の解剖』有朋堂書店

日本語学の分野において、岡倉由三郎について高く評価し、多くの記述を行ったのは、福井久蔵(1953)である(pp.239−243・pp.301−305)。福井久蔵(1953)は、岡倉由三郎の『日本語学一班』『日本新文典』『日本文典大綱』『文及び文の解剖』を取り上げている。