岡倉由三郎の著作の目次

『日本語学一班』

『日本語学一班』の構成は以下の通りである。
自序
緒言
第一  思想交換の方法
第二  言語と文
第三  言語及ひ文の成分
第四  言語は伝習によりてのみ授受せらる
第五  言語の起原
第六  文字
第七  言語教育の必要
第八  言語の変遷
第九  語の発音変る事
第十  発音機の構造  其の一
第十一 発音機の構造  其の二
第十二 父音母韻及ひ潰音
第十三 語の意味変わる事
第十四 国語中に存ずる古き成分失する事
第十五 国語中に新しき成分発生する事
第十六 国語の分離
第十七 人種と言語の関係
第十八 言語の原質的分類法
第十九 言語の系統的分類法
結語

福井久蔵(1953)は、『日本語学一班』については「発音言語学方面に関する我が国最初の出版物といふべきである」(p.239)と評価した。

日本新文典』

日本新文典』の構成は、以下のとおりである。

緒言
単語を組織する音韻
片仮名及び平仮名
母韻
父音
清音
濁音附たり鼻音
子音の性質
子音の解剖図
母韻の重複及び其長短
父音の重複
拗音の性質
父音の分類表
雅語の発音
略韻の事
約韻の事
添韻の事
施韻の事
化韻の事
にごりの事
添音の事
省音の事
化音の事
子音の変転
単語個々の分類
日本語の分類
働かぬ主辞
名詞
名詞の意義上の区別
名詞の性質上の区別
名詞の格、性、及び数の事
指詞
対人指詞
人称の事
対物指詞
不定指詞
不定指詞に疑問の意を示さする事
不定指詞に一層不定の意を添ふる事
数詞
媒助数詞の事
日本及び支那の重なる媒助数詞
副詞
数量の副詞
時間の副詞
状態の副詞
程度の副詞
疑訝の副詞
接詞
文章の初めにある接続詞
文章の終りにある接詞
感詞
自己に対する感詞
他人に対する感詞
働く主辞
用言の意義上の区別
未来言
将然言
既然言
連体言
連用言
終止言
命令言
拒否言
用言の語体
動作詞
動作詞の語体附たり語基
動作詞の語基上の区別
四段の動作詞
良行変格の動作詞
奈行変格の動作詞
中二段の動作詞
加行変格の動作詞
下二段の動作詞
佐行変格の動作詞
上一段の動作詞
下一段の動作詞
語基の異同を示す表
自動詞
他動詞
他動詞に二種ある事
令動詞
起動詞及び受動詞
自動詞も受動詞となり得る事
能意を示す動作詞
敬意を示す動作詞
形状詞
働かぬ助辞
働かぬ主辞に着く働かぬ助辞
主格を示すもの
領格を示すもの
受格を示すもの
被格を示すもの
所格を示すもの
器格を示すもの
数を示すもの
其他各種の意を示すもの
働く主辞に着く働かぬ助辞
未然言に着くもの
已然現に着くもの
連体言に着くもの
連用言に着くもの
終止言に着くもの
働く主辞に着く働く助辞
未然言に着くもの
已然現に着くもの
連用言に着くもの
終止言に着くもの
動作と形状との時間
単語の配列
文章
主語
助語
客語
文章の三類
第三種の文章に起こる変転
第一種第二種及び第三種の文章の複合するをりの注意
近代の文に多く見ゆる誤謬








山東功(2002)は、この中で岡倉由三郎の『日本新文典』を、以下のように「折衷文典」(注)として取り上げている。

物集高見『日本文典』以外には、那珂通世『国語学』(明治22年)、大槻文彦『語法指南』・落合直文/小中村義象『中等教育日本文典』・手島春治『日本文法教科書』(明治23年)、大和田建樹『和文典』・関根正直国語学』・岡倉由三郎『日本新文典』・高津鍬三郎『日本中文典』(明治24年)などが挙げられよう。(p.265)

福井久蔵(1953)は、『日本新文典』については「斯界の新智識である氏の著として看過してはならぬものがある。主格を示す後置詞『の』『が』は領格を示すものから転じたと説く如き創設がある。動詞の語尾を特に、従来の型を破って羅馬字を使用した。語尾変化の五階の名称を段また言の称を改め、終止形・連体形の如く形の字に改めた。チェンバレン氏の部別数詞といつたのを媒助数詞(後に助数詞)と改め、加行佐行変格動詞を田中氏と同じく三段活用と改めた」(pp.239−240)と評価した。

『日本文典大綱』

『日本文典大綱』の構成は以下のとおりである。

はしがき
例言
総釈
言語−語−詞章−の事
文字−意字−声字−音字−の事
国語−方言−古語古格−の事
国語の運用上の定則−の事
雅文−の事
音韻門−父音−濁気−清気−の事
清轢音−清破音−濁破音−鼻音−促音−の事
長韻−合韻−合音−子音−の事
体詞−用詞−助詞−副詞−接詞−感詞−の事
詞章の要素−の事
主語の形容−治定語の形容−の事
独立の詞章−隷属の詞章−の事
音部門
母韻−父音−促音−合韻−長韻−合音−の事
父音及び促音の分類−の事(第一表共)
神字−片仮名−平仮名−の事
鼻音と促音とを示す文字−の事
邦文に用ゐらるる符号−の事
漢字の使用上の区別−の事
和字−楷書−行書−草書−の事
かなづかひ−字音かなづかひ−の事
母韻上の変化−略韻−延韻−約韻−添韻−旋音−化韻−の事
父音上の変化−連濁−添音−省音−化音−の事
音韻の互用−の事
子音上の変化−子音の同化−其省略−其旋化−其合化−の事
単語門
語の構造−其本原−其由来−の事
単純語−複合語−本来語−伝来語−相伝語−借用語−の事
本邦の分類−の事(第二表共)
名詞−其なりたち−の事(第三表共)
固有名詞−普通名詞−無形名詞−の事
名詞の性及び数−の事
指詞−其なりたち−の事
人指詞−其人称−の事
物指詞−所指詞−方指詞−時指詞−其等の中の区別−の事
数詞−本邦数詞と支那数詞と−の事
本数詞と助数詞と−本邦及び支那の助数詞−の事
副詞−其分類−其構造−の事
接詞−其区分−の事
感詞−の事
形容詞−其構造−の事
形容詞の分類−の事(第四表共)
形容詞の勢及び時−助形詞−の事
動作詞−其構造−の事
動作詞の語体−其語尾の形−の事
動作詞の語基−の事
動作詞の分類−の事(第五表共)(第六表共)
動作詞の種類検知−の事
自性動詞−他性動詞−の事
動作詞の態−常態動詞−役態動詞−受態動詞−能態動詞
礼譲態動詞−の事(第七表共)
動作詞の法−助動詞−の事
動作詞の時相−の事
動作の勢−の事
助動詞組みあはせ−の事
助体詞−其分類−の事
助用詞−其分類−の事
通助詞−其分類−の事
詞章門
本邦の詞章の分類−の事
詞章の順序−其転倒−の事
語の順序−の事
詞章に係かれる諸規則−の事
詞章中の省略−の事
言語分析−の事

「はしがき」には、「本書を著すに際し、参考に資せし書どもの中に、アストン氏の(A Grammar of the Japanese Written Language)、大槻氏の広日本文典などに、おふ所極めておほし。また友人文学士芳賀矢一氏は、著述の方法其他に関し、大切なるあまたの注意を与へられたり」(p.1)と書かれている。
福井久蔵(1953)は、『日本文典大綱』について、「音韻門には新説がある。父音は十八箇ありといひ、その中にはngの音をも加へてある。・・〈中略〉・・単語門には各品詞を構造より単純・複合に、本原より相伝借用に、由来より本来伝来に分かち、動詞は富樫広蔭に倣ひ四韻三韻に分類し、語尾変化の名称中、已然形を実在連助形、将然形を仮定連助形と改め、敬称の上から尊敬対等謙遜語の別を立て、また叙述の上から平叙法・想察法・断定法・願望法・思惟法の姿があることをいひ、助辞を助体詞・助用詞・通助詞に分ち、詞章門には独立の詞章・隷属の詞章があることをいひ、詞章の排列に関し八則を立て、音韻分析・詞章分析・単韻分析を試みた。・・〈中略〉・・従来の係結といふ字句を避けて新しい説明を試みたり、旧い型を破って新たに文章法を樹立しようとした著者の意図は十分に買ふべきである。」(pp.240−241)とその独創性を評価している。

『新撰日本文典 文及び文の解剖』

『新撰日本文典』は出版社を変えて(1901年宝永館書店・1905年友朋堂書店)いるが、目次及び内容の変更はなく、以下の構成となっている。

はしがき
凡例
附記
第一課  語−文−主部−叙述部
第二課  単文−主語−体言−助体言
第三課  叙述語−用言−助用言−助辞−句−主詞−叙述詞
第四課  自用言−他用言−目的語−目的句−目的詞
第五課  不完全自用言−不完全用言−不全用言−補足語−補足句−補足詞
第六課  連体語−連体句−連体詞−兼体連体詞
第七課  連用語−連用の体言−連用句
第八課  文の成分
第九課  文の成分−語句の順序
第十課  文の解剖−口頭の解剖−解文図式
第十一課 独立文−連体文−成体文−連用文
第十二課 附属文−混合文−混合文の解剖
第十三課 叙述の語法−叙述の時相−独立の複合文−緊約複合文
第十四課 附属の複合文−複合文−接続詞
第十五課 複合文の解剖
第十六課 独立語−独立句−呼びかけの独立語−提示の独立語−独立詞−独立部−感動詞

凡例では「本書の大体の結構は、之をガウ氏の英語教授書第一篇に採れる所少なからず」と記されており、英語教授と国語との連携が垣間見える。英語教授法では、オレンドルフの影響を受けていることが知られ、朝鮮での日本語教育もオレンドルフで行っているが、日本語文典ではガウの影響を受けていることがわかる記述である。また、附記には以下のように記されている。

金井保三氏は、本書の編成につき種々注意を与えられしのみならず、余がために校合の労をさへ取られたり。依りてその由を茲に特書し、同氏に対する余が深き謝意を陳ぶ。(附記)

金井保三は、日本語文法としては口語の『俗語文典』、日本語教科書としては『日語指南』の著作があることで知られている。岡倉由三郎と同様に日本語教育にも携わった人物があげられているのは、興味深い。
福井久蔵(1953)は、『文及び文の解剖』について、「著者は一とほり単文の説明を了へた後、独逸文法に於けるが如き分類法により、連体文(名詞を修飾せる節をいふ)成体文(同上の如くにして被修飾語である名詞を略するもの)連用文(副詞の如き節をなすもの)三種の附属文を説き、叙述と時相とが同一の詞で終はつてゐる独立文を連続的に連結することを述べ、次第に複雑な解文の法を以てした。・・〈中略〉・・三土氏の文典のやうに広くは行はれなかつたが、文の構造を旨とする教科用のものとしては特記に値するものである」(pp.303−305)と評価した。