読解中心の活動

(読解中心の活動)

○学習の分析
読解とは、テキストに元々備わっている意味があるとした上で、読み手がテキストに関わることを通して自分なりの意味を作り上げていく創造的な営みであるという立場に立って、意味をさらに様々な角度から学習者個々が想像し、それを友達と交流させ、協働でより豊かな意味を創造していくことが追求されているのが想像の活動である。学習者は一度ざっと読んだ後に、このブレインストームのような活動を行い、その上で今度は内容や表現の形式を詳しく問う問題に答えるために丁寧に読む。問いに答え終わったら、続いてもう一度想像力で答える問いに答えることを通して、内容の解釈をより深いものにすることが目指される。
活動全体のまとめとして、クローズのタスクを行うことで、想像力を駆使した創造的意味解釈の重要性を学習することになると思われる。
○学習のデザイン−どのような新たな学習が実現できるか−
自分にとって第二言語である日本語を通して、自分の文化を表現してみる、人に伝えてみる、さらにまた自分の文化を相対的に見てみるという経験は、日本語が多くの文化を交流させる国際語として、また多くの文化が共生するための手段の言語、共生言語として新しく生み出されていくための貴重な場でもある。このようなタスクの一つ一つの積み重ねが、日本語を通して、それぞれの文化の持つ豊かな広がりを持った世界を味わうことを可能にしていくといっても過言ではない。

読みへの熟達

(読みへの熟達―読むことをどう教えるか―)

読解活動で問題となるのは、「読む量」「文字、語彙、統語、文章についての知識」「ストラテジー」「読む目的」「第一言語の活用」といった点である。このことを解消するために以下、三つの点についてみていく。
○読む分量の確保―個人読解とグループ読解の統合を通して
多く読むためには、テキスト自体の目的にあった読解活動が重要である。雑誌の娯楽記事、新聞の社説、小説などによって変わるものである。また、関心があるものであれば、量的にもたくさん読むことができ、無意識にスキーマを活性化し、予測を立て、その予測を検証しつつ読むことが行われる。
個人読解を行うメリットは、三つある。第一に「語彙の飛躍的増大」、第二に「学習者が自分自身をよく知ることができる」、第三に「読解が無理なく好きになる」である。
個人読解の問題点としては、「学習者が自由に好きなものを選ぶためには、図書の充実が必要であるが、予算的には無理であること」「グループワークが難しくなること」「学習者の学習動悸の維持が困難になること」などがあげられる。
グループ読解の長所としては、他の人の別の視点が導入されることで、新たな学習の過程が引き起こされやすく、学習に広がりや深まりが期待される。日本語教室でも、豊かな可能性を提供できる。
このような個人読解とグループ読解の特徴を考えて、個人読解とグループ読解とを並行して読み進めるデザインが考えられる。
○読解成功経験の蓄積
第一段階としては、先行タスクとして、「読む目的の明確化」「新スキーマの形成・既有スキーマの活性化」が必要である。そのための活動例として、キャレルはテキストのトピックと関連のある「講義を聞く」「映画、スライド、絵などを見る」「現場を見学する」「討論、ディベート、劇、ロールプレイなどをする」「語彙の連想ゲーム、アナロジーや比喩などで比較する」「テキストの概略、鍵になる語彙、プロットを簡単に紹介する」をあげた。また、語彙学習は先行タスクとして辞書的意味にかぎらずに、背景知識(スキーマ)を同時に扱うとよい。
第二段階としては、予測を立てながら、その予測を検証するために、つまり、能動的に読むという読み方の学習が必要である。特に、クローズ法による穴埋め方式は、スキーマを活用して埋めるものなので、有効である。
第三段階としては、フォローアップが必要である。フォローアップとは、テキストを読むことによって、新たに獲得した情報を既有のスキーマに統合したり、読みの過程で意思決定した事柄(未習語彙の推測結果のどちらをとるか、スキャニング、スキミングどちらで読むかなど)を確認したりすることを目指して、読んだ後に設定するものである。
ボトムアップ技能の養成―瞬時に意味内容を把握する力
ボトムアップの技能とは、テキストに表現されている文字を見て、語の意味や文型を素早く正確に、つまり瞬時のうちに、自動的に識別し認識することに関わる技能である。意識的に養成されていくことが多いものである。成人が一般的に備えているトップダウン技能を補償的に使って読解を進めながら、他方でボトムアップ技能を軸に語彙力・文法力の向上に努める方が賢明であり、現実的であるといえる。
語彙学習の方法としては、「語彙に関連のあるものでまとめる方法」と「チャンクでとらえる方法」がある。チャンクで識別するための方法としては、最小限の時間に限りながら、単語の代わりに意味のまとまりをもった句のレベルで行う識別方がある。