現代敬語の使い方

 こんばんは。最近、授業で敬語の話をすると、よくわかっていない生徒が目立つようになってきました。特に、謙譲語が難しいと感じるようですね。そこで、現代の敬語について考えてみることにしました。

 敬語の使い方や用法は、時代よって変化をしてきています。特に現代の敬語はどのような基準で考えればよいでしょうか。その一つの目安としては、昭和二十七年四月十四日に出された国語審議会建議による「これからの敬語」があげられます。この資料は国語辞典の付録として掲載されています。その概略を以下にまとめてみます。これらを読みながら、敬語について考えてみましょう。

一、 人をさすことば
(自分をさすことば)
1自分をさすことばとしては、「わたし」を標準の形とする。
2「わたくし」はあらたまった場合の用語とする。
(相手をさすことば)
「あなた」を標準の形とする。

二、 敬称
1「さん」を標準の形とする。
2「さま(様)」は、あらたまった場合の形、また慣用語に見られるが、主として手紙の宛名に使う。
3「氏」は書き言葉用で、「さん」を話し言葉用として使う。
4社会人としては原則として「さん」を用いる。
5職場用語としては、「先生」「局長」「社長」「専務」「課長」などには「さん」をつけて呼ばない。

三、「たち」と「ら」
1「たち」は現代語としては、「わたしたち」と自分のほうにつけてよい。
2「ら」は書き言葉で「A氏、B氏、Cら」のように誰にでも使ってよい。

四、「お」「ご」の整理
(つけてよい場合)
1相手の物事を表す「お」「ご」で、それを訳せば「あなたの」という意味になるような場合。
お帽子はどれでしょうか。
ご意見はいかがですか。
2真に尊敬の意を表す場合。
先生のお話
先生のご出席
3慣用が固定化している場合。
おはよう
おかず
ごはん
ご苦労さま
おいでになる(すべて「お―になる」の型)
ごらんになる(すべて「ご―になる」の型)
4自分の物事ではあるが、相手の人に対する物事である以上、それをつけることに慣用が固定している場合。
お手紙(お返事・ご返事)をさしあげましたが
お願い
お礼
ご遠慮
ご報告いたします
(省けば省ける場合)
女性の言葉としては「お」がつくが、男子の言葉としては省いていえるもの。
(お)米・(お)菓子・(お)茶碗・(お)昼
(省くほうが良い場合)
(お)ビール・(お)くつした・(ご)芳名
(ご)調査された(「調査された」「ご調査になった」が正しい)
(ご)卒業された(「卒業された」「ご卒業になった」が正しい)

五、対話の基調
これからの対話の基調は、「です・ます」体としたい。

六、動作の言葉
動詞の敬語法には、およそ三つの型がある。
書く―Ⅰ書かれる・Ⅱお書きになる・(Ⅲお書きあそばす)
受ける―Ⅰ受けられる・Ⅱお受けになる・(Ⅲお受けあそばす)
「れる」「られる」は簡単であるので、将来性がある。
「お―になる」の型を「お―になられる」という必要はない。
おそばせことばは、おいおいすたれる形であろう。

七、形容詞と「です」
これまで問題になっていた「大きいです」「小さいです」などは、認めてよい。

八、あいさつ語
あいさつ語は決まったままでよい。
おはよう。おはようございます。
おやすみ。おやすみなさい。
いってきます。いってまいります。
いただきます。ごちそうさま。いってらっしゃい。

九、学校用語
1「お」の使いすぎに注意。
(お)教室・(お)チョ―ク・(お)机
2「です・ます」体が望ましい。

十、新聞・ラジオの用語
敬称も「さん」を使うのは妥当である。
政治的記事には「氏」を中心に使う。
犯罪容疑者には敬称を省略してもやむをえない。

十一、皇室用語
昭和二十二年八月、宮内庁当局との報道関係との間に基本的了解が成り立っていた。
「玉体・聖体」は「おからだ」
「天顔・竜顔」は「お顔」
「宝算・聖寿」は「お年・ご年齢」
「叡慮・聖旨」は「おぼしめし・考え」
勅語」は「おことば」
「朕」は「私」

 いかがでしょうか?意外と、初耳のことが書かれていませんか?基本ほど大切というのは、このようなもののことをいうのではないでしょうか。