小論文概説

 こんばんは。今回は、私が「小論文」についての講演会などで作成し、使用しているプリントを掲載します。


「小論文」概説

「小論文」の基本

Ⅰ「小論文」と「現代文」との違い

○「小論文」は、分析して自分の意見を述べる。
○「現代文」は、出題者の意図に合わせて客観的に読む。

Ⅱ小論文を書く上での注意事項

○必ず清書する前にメモを取り、段落構成を考える。
○論理的に書く。つまり、主張したいことを述べるだけではなく、必ずその根拠・具体例を述べる。

Ⅲ評価される小論文の条件

一、理解力
○課題や課題文をよく理解している。
○問題の本質をとらえている。
○課題や課題文について、正確に読み取り、知識や関心がある。

二、構成力
○自分の意見を明確に述べている。その意見に説得力がある。
○論理的に、そして誰にでもわかる説明がなされている。

三、表現力
○正しい書き言葉で書かれている。
○正しい原稿用紙の使い方になっている。

Ⅳ知識の増やし方

一、入試の評論文を読む。
二、評論文のキーワードをよく理解する。
三、インターネットを利用する。
四、データブックを使う。
五、新聞の文化欄・学芸欄・教育欄・家庭欄・投稿欄などを利用する。
六、出題傾向(志望校・志望学部・志望学科に関連するテーマ)にあわせて、文庫や新書を読む。



Ⅴ表記の注意点

一、原稿用紙は正しく使う。
二、常体の「だ・である」で書く。
三、読める字で丁寧に書く。
四、字数の八割は埋めるようにする。
五、書き言葉にふさわしい表現を心がけ、係り受けや呼応関係に注意する。
六、漢字は正しく使う。
七、一文の長さは、長くても八十字以内におさえる。一文の平均は、四十字から六十字数程度である。
八、訂正する時間がないときのために、簡単な校正記号は知っておく。

Ⅵメモをするときの例

定義
それはそもそもどういうものか
現象・世論
それに関して社会で起きていること、いわれていることは何か。
理由・背景
なぜそうなったか。
歴史・地理
いつから、どこからそうなったか。他の時代、場所ではどうか。
展望
このままいくとどうなるか。
対策・解決
どう対処すればよいか。
体験・見聞
自分自身とはどんなかかわりがあるか。

Ⅶ自分の考えを展開するときの心得

一、自分の考えを具体化すること
「たとえば」ではじまる具体例が必要。
二、自分の考えに理由を示すこと
「なぜならば」「それというのも」などで続く文章を書き添える
三、自分の考えをわかりやすく言い換えながら徐々に表現を深めていくこと
「そして」「それから」、「つまり」「すなわち」などで始まる文章。
四、原因と結果を考えながら説明していく
「だから」「したがって」「それゆえ」ではじまる文章を考える。


Ⅷ自分の主張を相対化させる書き方

一、自分の考えだけでなく、他者の考えも示して両者を比較してみる。
二、現在の自分の立場だけでなく、過去の歴史的な事実から現在を考え直してみる。
三、文化を論じる場合、自分の属している文化だけでなく、異文化からも考え直してみる。
四、長所(プラス面)だけでなくて、短所(マイナス)もないか考えてみる。
五、事実(出来事)だけではなくて、なぜそれが起きたのかという背景や原因などを考えてみる。
六、問題点をいくつかに分けて、つまり複数の問題点を指摘してみる。
七、「これに対して」「これと比較して」「これに反して」などの対比させる表現をとりこむ。
八、「しかし」「ところが」「逆に」「一方・他方」などで文脈を分けることで視点を切り替える。

Ⅸ具体例の用い方

①自分の展開していく論述にふさわしい内容であること。
②あいまいでなく、はっきりとした表現であること。
③正確であること。
④あまり長すぎず簡潔であること。

Ⅹ最終段落を結ぶときの心得

まとめるつもりで、最終段落だけ読んでも言いたいことがわかるように結論をまとめる。ただし、二、三行で終わってしまうときには、問題をこの場限りに終わらせないで考え続けようとしたり、また行動として実践してゆこうとする姿勢を示すように書いたりしてもよい。

















「課題文」と「要約」

Ⅰ課題文の主題―傍線線を引く箇所

一、筆者が問題提起をしているところ。「―ではないか。」とか「問題は―である。」という表現でまとめているようなところ。
二、何度も文中で反復している考え方や主張のところ。
三、断定しているところ。「―べきである。」「―にちがいない。」など
四、強調しているところ。「―こそ―と考える。」など
五、定義しているところ。「―とは―である。」など
六、結論でまとめている内容。大体は最終段落で主張していること。

Ⅱ要約の注意点

一、繰り返し出てくる語に注意する。
二、主題文(冒頭と末尾に多い)に注意する。
三、要約文は、「内容は筆者のもの」「文章は自分のもの」であるものを言う。
四、要約文は、箇条書きしたものを、接続詞や指示語を使って、自分で考えてつなげる。
五、文の数を減らすために、いくつかの部分を一つの文にまとめる。
六、必要な部分をしっかりと残し、不要な部分は捨てる。
七、本文の記述を順番に並べるだけではなく、適当に順番に入れ替えたり、同じ内容は一つにまとめたりする。
八、本文よりもわかりやすいものであることが必要である。
九、六十字までは一文で書き、六十字以上になったら、二文にわける
十、下書きは制限字数の二倍程度でつくり、制限字数に合わせて削るとうまくいくことが多い。















文章構成法

Ⅰ文章構成法の分類

一、問題提起型
①課題文・課題から問題を発見して、問題提起をする。
「筆者は―という問題を提起している」「これについて私は―ではないかと考える」
②問題提起を具体例などを用いて詳しく考えていく。
③論じてきた問題点について今後どうしたらよいか、あるいは自分が今後もこの問題に対して主体的に関わっていくことなどをまとめる。

二、並列型
①課題から考えられた問題点を提起する。
②その問題点が複数にわたる多面的な問題を抱えていることを論じる。
③「まず第一に―」「次に第二に―」「さらに第三として―」
④この問題が一筋縄ではいかないものであり、根本的な対策が不可欠であることを指摘する。

三、対比型
①問題点を提起する。
②プラス面を考えてみる。
③「これに反して」や「これと逆に」などの表現で、マイナス面を説明していく。
④問題の解決にはこの両面があることを指摘して、マイナス面を克服してプラス面をのばしていくにはどうすることが必要なのかについて論じる。

四、歴史分析型(過去・現在型)
①現在の視点で問題を分析する。
②過去の視点で同じ問題を分析する。
③現在を過去から捉えなおしてみることで、浮き彫りにされる現在の問題点を明らかにする。

五、文化人類型
①自分の帰属している文化について説明する。
②これに対して、異文化と比較して共通点や相違点を指摘する。
③文化を相対化して考えることが大切であることなどをまとめる。

六、因果型(原因追求型)
①課題文から問題提起に持っていく。
②問いかけた問題の原因を考える。
③その原因に対してどのように対処したらよいかを説明する。

七、敷衍型
①課題文の要旨を、筆者が強く主張している意見にしぼってまとめる。
②「確かに―」と書き出して筆者の主張をさらに発展させて問題点を自分なりに深める。
③「しかし―」と書き出して、別の視点から問題を捉えなおしてみる。
④自分の考えをまとめる。

Ⅱ文章構成の例

一、題目が与えられた場合
①問題提起
題目に関する具体的な事柄や問題を示す。
②問題分析
最初に示した問題についての一般論や理想を例示する。
③展開
現実との差異、視点による長所・短所、問題の解決法などを中心に独自の意見を述べる。身近な経験や根拠となる事実を挙げ、自分の主張を裏付ける。
④結論

二、課題文が与えられた場合
①導入
課題文の要約あるいはテーマを簡潔に記し、自分の論につなげる。
②意見提示
自分の意見を提示し、課題文の主張との相違を述べる。
③展開
自分の意見をより発展させる。
課題文の主張に同調する場合は、新たな例や自分自身の経験などを挙げて意見を支持する。
課題文に反対する場合は、根拠となる事例を示して反論する。
④結論
課題文および設問に応じて自分の意見をまとめる。

三、資料が与えられた場合
①問題提示
資料から読み取れる問題を明確にする。
②問題の分析
問題の原因や背景を、資料に基づいて探る。
③提案
問題の解決策を提案する。その際にも、資料による裏づけをする。




「小論文」のテーマについて

Ⅰ出題内容
一、一般常識について意見を問うもの
二、個人的な体験や意見を問うもの(私立大学の推薦入試に多い)
三、志望先の専門分野に関して知識や意見を問うもの(国立大学に多い)

Ⅱ頻出テーマ

一、志望理由・自己推薦
二、地球環境問題・エネルギー・資源
三、消費社会の問題・豊かさ・ゴミ問題
四、日本の国際貢献・国際社会問題・途上国援助
五、民族紛争の解決・政治・経済・選挙問題・政治改革問題
六、人口問題・食料問題・難民問題
七、高齢社会の問題・年金問題少子化・福祉・介護問題
八、男女平等社会・結婚観・ジェンダー
九、多様化する現代の家族のあり方
十、いじめ・死の教育・ゆとり教育教科書検定
十一、医療従事者と患者の関係・生命倫理・病気・健康
十二、異文化交流・多文化・日本語
十三、ボランティア活動・スポーツ
十四、高度情報化社会・メデイア
十五、科学技術・学問・近代・脱近代・宇宙開発
十六、基本的人権・民主主義・正義・人間関係・司法
十七、芸術の役割
十八、若者の生き方・職業観

Ⅲ学部別頻出テーマ
政治学系「現在の社会がどのように変わりつつあるか」
経済学系「経済を動かす要因は何か」
総合政策学系「これからの国家の役割とは何か」
法学系「なぜ人権は大切か」
社会学系「多様な人が社会でともに生きるためのルールとは何か」
文学系「本当の人間らしい生き方とは何か」
芸術学系「芸術作品の意味をどう考えるか」
映像系「与えられた材料から物語を構成する」
教育系「いじめなどの問題をどう解決するか」
福祉系「少子高齢化社会の問題点は何か」
家政学系「現代の食生活はどこが問題か」
国際学系「異文化をどう理解するか」
国学系「外国語を学ぶ意味は何か」
情報学系「高度情報化社会の問題点は何か」
環境学系「環境保護と経済発展は両立できるか」
人間科学系「現代の人間関係と心理の特徴は何か」
工学系「科学技術の未来像と新たな問題」
理学系「化学物質が環境に与える影響について」
農学系「バイオテクノロジーをどう使うべきか」
獣医学系「ペットブームの功罪について」
医学系「患者に余命を告知すべきかどうか」
看護系「真の思いやりとは何か」
推薦・AO入試全般「大学・学部・学科の志望理由」