漢文の解き方

 こんばんは。今回は、漢文の解き方です。私が作成したもので、ちょうど、年末ごろの講義で配布しているものを掲載してみます。

「漢文の解き方」
一、読解・解答の手順
①リード文・注・出典・設問に軽く目を通して、文章構造・展開・対句などを確認する。選択肢は読まない。
②注を利用し、本文を一回目は訳さずに読み、解けそうな設問を解く。
③本文を二回目はじっくりと残りの設問を検討しながら読んで解く。傍線部・空所は一文に拡大して分析してから解く。
④選択肢を横に見渡しながら設問を解く。
⑤設問を解きながら、そして設問を利用しながら本文の内容をつかむ。
⑥現代文などで時間がかかったり、漢文の文章や設問数が多くて漢文の時間がないときには、傍線部や空所の直後の三行までか段落ごとの範囲で、解けるものはどんどん解いていく。
二、中国人は、陰陽二元論にもとづく対の思考を持っている。したがって漢文では、漢詩だけでなく、散文でも対句や対句的表現が多く使われ(対句には並列しているものと、反対という対照的なものとがある)、その一方に傍線が引かれることが多い。また、中国は南北では食習慣も言葉もかなり異なるので、南北では国際結婚並みの違いがある。儒教の精神が流れているので、仁義礼智信忠孝ということばもよく出てくる。
三、白文訓読・書き下しの設問
①直読して前後からだいたいの意味をつかむ。「主語+助動詞+動詞+名詞」の語順を意識する。
②傍線部の漢文の句法・語法・返読文字・慣用句を正確に見抜く。
③傍線部前後や少し離れた所にある対応表現・対句を参考にする。
④オーソドックスな読み方になっているか、古文文法のルール(特に助動詞の部分)にあっているかを確認する。
四、傍線部解釈の問題
①漢文の句法・語法を見抜く
②傍線部前後にある対応表現・対句に注意。
③漢文特有語をつかむ。
④指示語があれば、指示内容を考える。主語・目的語を考える。
⑤注を利用する。
⑥古文文法で微調整しながら、逐語訳して日本語として不自然な表現があれば修正する。
五、語意・単語の問題
①文法的な位置や品詞(VOの関係が成立したり、「する」をつけて読めれば動詞、「な」をつけてよめれば形容動詞)を考え、構造をつかみ、文脈的な位置も見て代入してみる。
②一文字なら二字熟語、二文字なら一文字ずつ二字熟語に置き換えたり、上下の順序を入れ替えてみる。
③本文中にある同内容・対立内容の語を見つける。
④注を利用する。重要な漢文特有語は覚えておく。
六、会話部分の判定
①会話文は主張を示し、地の文は状況や行動の説明になる。
②会話部分には人称代名詞が使われることが多い。
③「余・予・朕・寡人・臣」は一人称、「子・夫子・若」は二人称。
④質問部分なのか、回答部分なのかを考慮する。
七、随筆・評論
①文中の反語・感動表現には主張が出やすい。
②対句・対応表現があれば設問を解くのに利用する。「対偶構造」「条件―帰結」「状況・動作―判断・心情」に注意。
③比喩や例示や引用は主張したいことの根拠付けに(肉付けに)過ぎない。
④冒頭と末尾に結論が出やすい。「夫(それ)」(以上を受けた上での筆者の主張)、「今(いま)」(話題を現実や現在の問題に転換する)、「此(これ)」(総括)の後ろに注意。
八、逸話・説話(小説)
①人物紹介のあと、エピソードがくる展開が多い。
儒教の要素が強いので「仁・義・礼・智・信・忠・孝」のことばに気をつける。そして、登場人物のどんな点が偉いのかをつかむ。
③登場人物の会話部分に反語の強調表現があれば注意する。反語には強く主張したいことが示される。
④一人称と二人称を表すことばが多いので、注意する。
九、漢詩の規則に関する問題
①詩型
句の数が四句なら絶句、八句なら律詩、その他なら古詩である。4句でセットになる。
押韻(音読みしたときの同じ音の響き)
偶数句末で韻を踏む(第一句末も韻を踏むことがある)
韻を踏む箇所をローマ字で書いてみて比較する。
特に漢詩の句末の空欄補充問題で韻を使って解くケースが多い。
③対句
連続する二句(奇数句と偶数句)の字数と文法構造(品詞)が同じになるものが対句になる。
返り点もそろうことが多い
律詩では、第三句と第四句、第五句と第六句が対句になるのが原則。
④テーマ
自然・友情・別れ・望郷・戦争・政治批判・嘆老・感傷などが中心。
詩題や結句、最終聯に注目する。また、必ず注を見ること。人物・地名・季節・擬人的な注には要注意。
⑤主な詩語
月(故郷への思い)・孤蛍(作者の孤独感)・浮雲(行方のわからない旅人)・白雲(行方のわからない旅人)・雁(故郷への思い、秋、手紙)・流水(別れていく友への思い)
十、内容一致・主旨・論旨・主張問題
①書かれていないことは消去する。
②本文の冒頭と末尾のまとめの部分に注意する。
③反語に注意する。
④反復して出てくる語はキーワードになる。
⑤登場人物、動物、物に関する説明内容の正誤を確認。
十一、原因・理由説明問題
①前後の発言や傍線部までの事の経過の内容(もしくは説明や言い換えの箇所)に注意する。
②傍線部の動作主の性格・立場・人間関係・判断の内容などその特徴に注意する。
③「故(ゆゑに)」「是以(ここをもつて)」「因(よりて)」「為(ため)」「所以(ゆゑん)」に注意。