万葉集の魅力

「『万葉集』の魅力」
 『万葉集』は、現存する最古の和歌集です。七六〇年前後に成立したもので、大伴家持の編纂と推定されています。二〇巻で四五〇〇首が収められており、天皇・皇族から広く庶民の歌まで収め、時代は前後三世紀にも及んでいます。部立は、雑歌・相聞・挽歌の三種が中心で、歌体は、短歌・長歌・旋頭歌・片歌・仏足石歌などがあります。漢字の当て字のような万葉仮名よ呼ばれるもので表記されており、素朴・簡明な歌風で「ますらをぶり」と呼ばれています。約一五〇〇年前の日本人の息吹を感じることができる、すばらしい歌集です。主な万葉歌人と時期をあげてみると、次のようになります。
(第一期)初期万葉の時代・六二〇―六七〇・壬申の乱前後までの動乱の時代
額田王
力強く、情熱的で豊かな感情を華やかに歌い上げた。
有間皇子
斉明天皇の時代、謀反を企てたとして刑死。わずか十九歳であった。
(第二期)万葉調の時代・六七〇―七一〇・律令国家の確立
柿本人麻呂
宮廷歌人として皇室を賛美した歌が多く、長歌形式を完成した。『万葉集』に約五〇〇首収録させる代表的歌人
大津皇子
天武天皇時代、皇太子草壁皇子に謀反を起こした罪で刑死。二十四歳であった。
(第三期)万葉調の最盛時代・七一〇―七三〇・律令政治の安定期
山部赤人
叙景歌にすぐれ、これを完成。絵画的な歌風。
大伴旅人
大宰帥、大納言などを歴任。藤原氏の圧迫に苦しんだ。
山上憶良
苦しい生活体験や妻子に対する愛情を詠んだ。
(第四期)万葉時代の終焉時代・七三〇―七六〇・天平文化爛熟期・社会矛盾拡大期
大伴家持
万葉集』の編者といわれている。歌風は感傷的で繊細、現実から離れ、想像の美を描く。