夏目漱石と森鷗外のテーマ

夏目漱石森鷗外のテーマ」
 高等学校の教科書には、夏目漱石の『こころ』や森鷗外の『舞姫』『高瀬舟』が載っていますね。これらの教材は、何を意味しているかを知っている受験生が少ないのには驚かされます。
 簡単にいうと「近代の自我」がテーマなのです。夏目漱石は『こころ』の中で、近代人のエゴイズムを取り上げました。この作品では、先生と呼ばれる人物は、Kを自殺に追い込んでしまったのは、利己主義によるものです。つまり、個性が自我のためにエゴイズムになる危険性を指摘したのです。自己中心的な生き方は、個性や自我ではないことを述べたかったといえます。また、森鷗外は自伝的な『舞姫』を書くことで、自我を通したかったが、封建的な家に屈してしまった、いわば自我の挫折を示したものでした。『こころ』と『舞姫』は、日本近代の自我の難しさを指摘した作品といえます。このように、本質的なテーマを中心にすえて、これらの作品を読んでみると、また違った味わいがあるものです。
 なお、夏目漱石森鷗外のあとは、芥川龍之介を経て、志賀直哉で自我というテーマの作品は完成しました。