品詞分類と学校文法

品詞分類と学校文法

 

1.学校文法

a.古典文法・・作品理解のための解釈文法・理解文法

b.口語文法・・国語を理解するための規範文法・記述文法・表現文法

 

2.学校文法への影響力

a.橋本進吉監修・岩淵悦太郎執筆『中等文法』(1943・1944)

→岩淵悦太郎執筆『中等文法口語』『中等文法文語』(1947)

     橋本進吉『新文典別記 上級用』(1938)の影響力

「橋本進吉の文節文法・品詞分類」と「山田孝雄の副詞と助詞の分類」

b.橋本文法・・大槻文彦の品詞分類に近い

文節文法

  c.文節文法の発展と修正・・佐伯梅友・田辺正男・渡辺実・北原保雄

 

3.品詞分類の歴史

上代・・『万葉集』に「てにをは欠く歌」の記述

中世・・歌学書に「物の名」「ことば」「てにをは」の記述

近世・・富士谷成章『あゆひ抄』・・名(な)・装(よそい)・挿(かざし)・脚結(あゆい)

鈴木朖『活語断続譜』『言語四種論』

・・体の詞(ことば)・形状(ありかた)の詞・作用(しわざ)の詞・てにをは

東条義門『玉緒繰分』『活語指南』

・・有形の体言・無形の体言・形状の用言・作用の用言

富樫広蔭『詞の玉橋』・・言(体言)・詞(用言)・辞(動辞・静辞)

近代・・権田直助『語学自在』・・詞(体言・用言)・辞(用辞・体辞)

鶴峯戊申『語学新書』・田中義廉『小学日本文典』・・英文法的分類

大槻文彦『語法指南』(『言海』の付録)・『広日本文典』『同別記』

・・名詞・動詞・形容詞・助動詞・助詞・副詞・接続詞・てにをは・感動詞

山田孝雄『日本文法論』『日本文法講義』・・国学・論理学

橋本進吉『国語法要説』『国語研究法』『国文法体系論』・・大槻文法の流れ

松下大三郎『標準日本文法』・・話しことば・日本語教育の流れ

時枝誠記『日本文法文語篇』『日本文法口語篇』・・国学の流れ

 

4.品詞分類の視点・・単語を形態・意味・職能などの点から種類分けしたもの

a.素材としての語「詞」(モノ・コト・サマ)+素材間の関係または話し手の態度を表す語「辞」(テニヲハ)・・時枝誠記

自立語(詞)・・活用がある(動詞・形容詞・形容動詞-用言-)

活用がない(名詞・代名詞-体言-)

(副詞・連体詞・接続詞-副用言-)

(感動詞)

付属語(辞)・・活用がある(助動詞)

活用がない(助詞)

b.主語になるもの(名詞)+主語にならないもの・・橋本進吉

主語になる・・体言(名詞・代名詞)

主語にならない・・副詞・連体詞・接続詞・感動詞・助詞・助動詞

述語になる・・用言(動詞・形容詞・形容動詞)

 

5.品詞別の特徴

1動詞・・(例)飛ぶ・咲く・いる

a動作・作用を表す。bウ段で終わる。c活用する。命令形がある。

2形容詞・・(例)堅い・美しい

a性質・状態を表す。b「い」で終わる。c活用する。命令形がない。

3形容動詞・・(例)素直だ・静かだ・静かです

a性質・状態を表す。b「だ」「です」で終わる。c活用する。命令形がない。

4名詞・・(例)鳥・あなた・万葉集・五

a物事を表す。b活用しない。

5代名詞・・(例)これ・それ・あれ・どれ

a物事を指し示す。b活用しない。

6副詞・・(例)にっこり・とても・もし

a主に用言を修飾する。b修飾語になる。c活用しない。

7連体詞・・(例)この・ある・わが

a体言を修飾する。b修飾語になる。c活用しない。

8接続詞・・(例)また・それから

a主として文と文とをつなぐ。b活用しない。c接続語になる

9感動詞・・(例)ああ・もしもし・はい

a感動・呼びかけ・応答を表す。b独立語になる。c修飾語にならない。

d活用しない。

10助動詞・・(例)た・だ・ない

a意味を付け加えたり、話し手の判断を表したりする。b活用する。

11助詞・・(例)が・さえ・に

a語と語の関係を示したり、意味を付け加えたりする。b活用しない。

 

6.形容動詞認定の問題点

a.近世の国学者・・形容動詞を認めない

b.近代の国語学者・・形容動詞を認める(橋本進吉)

形容動詞を認めない(時枝誠記・新村出編『広辞苑』)

c.言語学・日本語教育・・形容動詞を認めない(イ形容詞・ナ形容詞)

(例)静かだ・さわやかだ

1.学校文法・・性質・状態を示す・・「静かだ」・「さわやかだ」で「形容動詞」。

2.岩波の国語辞典・・二つに分けられる・・「静か+だ」・「さわやか+だ」は「名詞+断定」

d.「名詞+だ」とする問題点・・「名詞は主語になる」という定義と合わない

(例)

「外国は」「私は」などのように名詞は主語として使用できる。

「静かだ(形容動詞)」を「静か(名詞)+だ(断定)」・・「静か」は「静かは」「静かが」という形で主語としては使えない→名詞として認定できない

※歴史的にみると名詞に語尾がついて形容動詞が派生した。名詞を厳密に定義すると形容

動詞を認めたほうがよく、日本語を歴史的にみると形容動詞を認めないほうがよい。

 

7.「れる・られる(る・らる)・せる・させる(す・さす)」の特殊性

(扱い)

a.助動詞・・橋本進吉

b.接尾語(動詞の一部)・・時枝誠記

c.特殊な複語尾・・山田孝雄

(特徴)

a.格関係を変化させる。

  (例)太郎が花子を呼び出した。→花子が太郎に呼び出さた。

b.動詞と動詞の間に位置する。

  (例)部長に言わなさる。

c.活用形が完備している。

  未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形(已然形)・命令形

 

(参考文献)

芳賀綏(1962)『日本文法教室』教育出版.

阪倉篤義(1974)『日本文法の話』教育出版.

渡辺正数(1978)『先生のための口語文法』右文書院.

中村幸弘(2011)『学校で教えてきている現代日本語文法』右文書院.

山田敏弘(2004)『国語教師が知っておきたい日本語文法』くろしお出版.

  山田敏弘(2020)『国語を教えるときに役立つ基礎知識88』くろしお出版.