漢文の背景知識と単語

 おはようございます。今回は、漢文単語と背景知識の話を書きます。漢文の単語や背景知識としては、『漢文句形と単語』(河合出版)と『漢文句形とキーワード』(Z会出版)がしっかりと作られています。『漢文句形とキーワード』は細かいので、難関私大や難関国立大向きといえます。センター試験や標準的な私立・国立であれば、『漢文句形と単語』で十分だと思います。
 漢文の背景知識で読解しようと試みた参考書として、『多久漢文講義の実況中継』(語学春秋社)があります。この本の著者の多久弘一氏は、元代々木ゼミナールの人気講師だった人物で、1917年生まれの方で、戦前の漢文の専門学校の名門、東亜同文書院の出身です。多久弘一氏の漢文は、背景知識で読解しようとしましたために、たいへん面白い講義となって人気博しました。しかし、漢文の基本的な知識がある時代はよかったのですが、基本ができていない世代になるとともに、その指導法には限界がきました。しかも、入試問題の時代の変化に教授法が対応できなかったことも人気凋落の原因でした。『多久の漢文講義の実況中継』は、基本ができた人が、漢文の背景を楽しむために読む本です。実際、受験からは離れた漢文の面白さを味わうための本なので、気軽に読むのがよいでしょうね。なお、多久弘一氏は、國學院大學の漢文の講義も講師として行っていましたが、評判はあまりよろしくありませんでした。時代が、一見役に立たない背景知識に興味をもたない、いわば心の余裕のない時代となったためでしょうね。