文章心理学

○文章心理学

波多野完治という心理学者は、「文章心理学」を創始しました。その研究は、文体分析の手段として、文の長短、句読点の多少、品詞別にみた用語の使用頻度、修辞技法、複文・重文・単文の別などをとりあげ、量的な考察を行っています。
波多野完治の後継者の安本美典氏は、作家の文体を次の3つの因子を軸として分類しています。
A因子・・体言型−用言型
B因子・・修飾型−非修飾型
C因子・・会話型−文章型
この中で、安本美典氏はB因子に注目しています。
B因子が多い・・色彩に富んだ油絵的文章
B因子が少ない・・枯淡で光を内に隠した水墨画のような文章
また、清少納言紫式部の文章を次のように比較しています。
清少納言・・色彩語が多い・・色型人間・躁鬱気質・・ユーモア・あけっぴろげ・社交的
紫式部・・色彩語が少ない・・形型人間・分裂症気質・・自閉的・孤立的・外柔内剛・誇り高い
この「色型人間」という用語は、千々岩英彰氏の命名で、「日常生活の中で、色物商品を多用している若者」のことをさします。それに対して色物の使用の少ない若者を「形型人間」としています。その特徴は次のようにまとめられます。
「色型人間」・・情緒不安定で外向型
1強烈な刺激をたえず追い求める
2流行の変化に敏感で、それを積極的に取り入れる。
3快活で人づきあいはよいが、外部の刺激にかきまわされて、気分や情緒の変化が激しい。
4直観と感性に頼りたがる。着想と表現がユニークである。
5形型人間・・分裂症気質に通じる特徴。内向的で無愛想、とっつきにくい。一つのことに打ち込む。
作家が文章中で好んで使っている色からの推測も行われています。
夏目漱石・・赤より青を好む・・内閉的性格
石川達三・・青より赤を好む・・行動的な循環気質(躁鬱気質)
与謝野晶子・・紅・紫を好む・・感情と空想の奔逸するロマンチスト