谷崎潤一郎と直木三十五の句読点
〈感覚的に用いた句読点の例〉谷崎潤一郎『春琴抄』
おしやべりをしないから邪魔にならぬからといふのが果たして春琴の真意であつたか佐助の憧憬の一念がおぼろけげに通じて子供ながらもそれを嬉しく思つたのではなかつたのか十歳の少女にさういふことは有り得ないとも考えられるが、俊敏で早熟の上に盲目になつた結果として第六感の神経が研ぎ澄まされてもゐたことを思ふと必ずしも突飛な想像であるとはいへない気位の高い春琴は後に恋愛を意識するやうになつてからでも胸中を打ち明けず久しい間佐助に許さなかつたのである。
〈句読点愛用者の例〉直木三十五『明暗三世相』
その当初、外様大名の、策謀を恐れ、その所領の国々に、程よく案配し、外様、新藩、外様と並べて、隣国同志にて、互いに、落度を見つけさせ、反目させ、警戒させ、団結を防ぎましたが、このために、天下は今日まで、続きましてございます。