百人一首の口語訳46-50

四六
由の瀬戸を漕ぎ渡ってゆく舟人が、かいがなくなり行くえも知らず漂うように、どうなるのか見当もつかない恋のなりゆきであるよ。
四七
幾重にも葎の生い茂っているこの邸のさびしい所に、人は誰も訪ねて来ないが、秋だけはやってきてしまったのだった。
四八
風がはげしいので、岩にうちあたる波が、己ひとり砕け散るように、私だけが心もくだけるばかり物事を思い悩むこのごろであるよ。
四九
みかきもりである衛士のたく火が、夜は燃えて昼は消えている。そのように私も、夜は恋の炎に胸をこがし、昼ははかなく消え入るばかりで、絶えず物思いにふけっているばかりである。
五〇
あなたのためには死んでも惜しくないと思っていた命までもが、逢瀬の叶えられた今となっては、末永くありたいと思うようになったのだった。