百人一首の口語訳51-55

五一
せめて、こんなふうだと言うことさえできない。伊吹山のさしも草ではないが、あの人はさしも知るまい。私の火のように燃えあがる胸の思いを。
五二
夜が明けてしまうと、やがて日が暮れ、そうするとまた逢えるのだとは知っているものの、それでもやはり恨めしい明け方であるよ。
五三
嘆き嘆きひとり寝る夜の、その明けるまでの間がどんなに長いものか知っているだろうか、よもや知るよしもあるまい。
五四
私のことをけっして忘れまいと言うあの人の言葉も、遠い将来までは頼みにしがたいものだから、今日という日を最後とする命であってほしい。
五五
滝の水音は聞こえなくなってから長い年月がたってしまったけれども、その名声だけは流れ伝わり、今日でもやはり世間に知られている。