古文の解き方

こんにちは。今回は、「古文の解き方」という、私の作成したプリントを掲載します。

「古文の解き方」
一、設問を解く手順
①リード文・出典・注・設問に軽く目を通し、口語訳しないで全体のおおまかなつながりや語法をつかむつもりで一読する。このとき、だいたいわかればよい。
②解ける設問を解く。
③傍線部や空所の近くを丁寧に口語訳して読みながら残りの設問を解く
④傍線・空所を含めた一文まで拡大して分析して考える。それでも、解答がだせないときは、その近くから解答の根拠をさがす。
⑤選択肢を横に切りながら設問を解く。
⑥現代文などで時間がかかったり、古文の文章や設問数が多くて古文の時間がないときには、傍線部や空所の直後の三行までか段落ごとの範囲で、解けるものはどんどん解いていく。
二、内容一致・主旨選択問題の消去法の基準
①明らかな間違いや矛盾は×
②多少の不足や語句の言い換えは〇か保留
③多少の傷はあるが主旨にあっていれば〇
④曖昧な選択肢は保留。
⑤主人公の行動・会話を確認する。
⑥選択肢に本文と対応する部分がなかったり、選択肢に本文にない余分な表現が入っていたら×
⑦重要語句の訳出は正しくなされているかを確認する。
⑧数・月・季節の記述は的確かを見る。
⑨主語・目的語はあっているかを見る。
⑩使役・受身表現が一致しているか、敬語表現は正しいかを見る。
⑪対比の表現、順接と逆接に気をつける。
三、傍線部訳・品詞分解の手順
①助動詞・助詞
②敬語
③重要単語・呼応の副詞
④主語・目的語・指示副詞。
四、記述問題のことばを補って解釈する場合に補うもの
①主語(動作主)
②指示語の指示内容
③目的語・補語
④省略語
五、マーク式の傍線部訳の許容範囲
①「やは」「かは」「疑問語+か」「んや」「めや・らめや」などの反語は、「―か、いや―ない。(―ないか、いや―だ)」「―ない(―だ)」
②「む+名詞」の「む」の婉曲は、「ような」「訳さない」
③二重否定は、「―でないのではない」「―だ」
④「まし」を使った反実仮想は「―なら(たら)―だろうに」「―でないので―でない」
⑤禁止は「―するな」「―でないことをせよ」
⑥疑問の「や・か」は、「―か」「―かもしれない」
六、指示副詞の「さ(そのように)」「かく(このように)」「しか(そのように)」に傍線が引かれたら、何を指すのか考える。前から探しても見つからないないときは、後ろを見る。
七、主語の判定
主語につく「は」「が」は省略されるので、「は」「が」を補う。
①尊敬語の有無とその軽重
②活用語の下の「て」「で」「つつ」の前後が主語が同じことが多く、「を」「に」「が」「ど」「ば」の前後は主語が変わりやすい、(「て」が「ので」の意味になると主語が変わるし、「ば」が心情語の下につくと主語は変わらない)
③「き」「ばや」「たまふ(下二段)」の主語は一人称(私)という性質を利用して、文脈に照らしあわせる。なお、日記・随筆(評論)では、作者が登場するので、主語が見つからくて、述語が心情語や謙譲語の場合は、主語は作者の可能性が高い。ただし、作者には尊敬語はつかない。物語では、普通の敬語・二重敬語・軽い敬語・敬語無しの使い分けをするものもあるので注意。また、前文の主語が次の文でも継続される場合は、主語を書かない傾向がある。
八、記述問題で、傍線部の主語を文中の語で示すときに、複数の呼び名がある場合は、はっきりしている人物名を優先させて書く。優先順位は、①人物名②官職名・官位名③通称。
九、和歌での作者の心情
①和歌の前後の文章から、どういう状況・場面で詠まれたものかを確認する。
②係り結び・「かも」「かな」などの詠嘆の終助詞・「けり」・「べし」・「まじ」・願望・命令・副助詞の「し」倒置法という心情の強調表現を見てみる。
③作者の心情は下の句に表れやすいので、下の句をじっくりと詠むとよい。なお、歌物語では、和歌を中心にして和歌と本文との対応を重視して読解すること。古典では、全般的に、和歌を詠むことで願いが叶ったり、幸福になったりする話(歌徳説話)が多い。

十、和歌の解釈法
①57577に分ける
②終止形・命令形・終助詞・係り結びの結びの下に句点を施す。
③句点の前後を接続語(というのも・なぜなら・だから・しかし・けれども)でつなぐ。
④和歌の近くにある文章や和歌を反映させて、語法に気をつけながら口語訳する。
⑤主語は特に書かれていなければ、作者を主語と考える。
⑥意味の通じる日本語に修正する。
十一、和歌の修辞技巧の設問
①掛詞
掛詞は地名で起こりやすい。
物・景物と心情の掛詞が多い
不完全な掛詞でもよい
清音と濁音の違いは許容される
散文でも使われることもある
掛詞と縁語がセットで使われることが多い
②序詞
七音以上が多い
比喩式・同音反復式・掛詞式が多い
散文の中でも使われることがある。
③枕詞
五音が多い。
「―の」が多い。
口語訳できないものが多い。
特定の語を下に導く。
第一句めか第三句めにくる。
十二、心情説明問題
①形容詞(特にシク活用形容詞)―プラスかマイナスかをつかむ
②形容動詞―プラスかマイナスかをつかむ
感動詞
④知覚動詞
⑤和歌
⑥身振り手振り
⑦会話文・心内文
⑧「心」が含まれる漢字
⑨複雑な心理を表す重要古語「なかなか・なかなかなり」「さすがに・さすがなり」「あやにくなり」「さはれ・さばれ」
十三、原因・理説明問題
①前後の会話・心内文に注意する。
②「―から・ので」にあたる形に注目する。
「已然形+ば」
「連体形+を・に」
「この故(ゆゑ)に」「この故は」
「ため・(に)よりて・時・条・間・ままに」
「(これを)見て」
十四、古文単語の解釈設問
古文単語は、古今異義語・古文特有語・慣用句がある。古文単語の選択肢では、現代語と同じ意味の選択肢は不正解の場合が多く、古語と似た現代語の選択肢は不正解の場合が多い。一般的な語を見慣れない訳し方をしているものは正解であることが多い。辞書的な口語訳ではなく、文脈に応じて言い換えてくる場合もあるので、必ず文脈は見ること。
①傍線部の近くの流れを見る
②頻出する意味を当てはめる
③現代語と異なるものに注意する
④プラスとマイナスの両方の意味がある単語(「はづかし・ところせし・やさし・あはれなり・いとほし・うるさし・ありがたし・なのめなり・おぼろけなり・けしからず」など形容詞・形容動詞に多い)は、傍線部前後の重要単語に気をつけて文脈からプラスかマイナスを判断する。
⑤助動詞・助詞が混ざっているかを確認する。
⑥一発で意味の分かる訳の固定している古文単語(ここら・あからさまなり・かげ・日ごろ・やをら・やうやう・しるし・ののしる・おどろく・例の・かたみに・おこたる・おくる・ありく・ひま・なほ・あそび・さすがに・おのづから・なかなか・ついで・たより・なやむ・ことわり・なべて・つとめて・よし・かしづく・あへず・さらなり・ありつる・具す・まうけ・いそぎ・としごろ・ことわる・にほふ・あきらむ・かまへて・かたち)と文脈によって変わる多義語(いと・いみじ・いたし・かしこし・いたし・やんごとなし・ゆゆし・むげに)とを意識する。
⑦プラスのイメージの単語(いうなり・うつくし・らうたし・便なり・うるせし・かなし・なまめかし・まめなり・おとなし・あらまほし)とマイナスのイメージの単語(うし・うたてし・つらし・つれなし・すさまじ・さうざうし・むつかし・なめし・かたはらいたし・をこなり・あたらし・うしろめたし・おぼつかなし・心もとなし・おろかなり・わびし・あだなり・あながちなり・こちたし・つつまし・あやし・あさまし)があり、訳に広がりがある。また、形容詞は心情や文脈をつかむ手がかりとなる。
⑧呼応の副詞と呼ばれるセットで使うもの(えー打消・さらにー打消・つゆー打消・たえてー打消・をさをさー打消・なーそ)には注意する。
十五、文章の主旨・主題を問う設問
①係助詞(こそ・ぞ・なむ・や・か・は・も)
②反語(やは・かは・んや)
③二重否定、同格
④冒頭と末尾
⑤強い助動詞「べし」「まじ」「き」
⑥「すべて」「何も何も」「おほかた」で始まる一文
⑦願望(まほし・たし・なむ・ばや)
⑧命令形
⑨強意の副助詞「し」・終助詞「かし」
⑩断定に主張が表れやすいので気をつける。
⑪説話では、教訓性の高い一文を末尾において、その話から導かれることを結論としてまとめる。
十六、会話文は、言はく・言ふやう・文脈、「  」と・とて・など+「言ふ」系の形になる。心内文は、文脈、「  」と・とて・など+「思ふ」系の形になる。
十七、新段落が始まる目安としては、①文脈②時・所・人物・素材の変化するところ③「さる程に・しかる間に」「さて・かくて」「そもそも・それ」「おほかた・すべて」「ただし・されど・されば」で始まる一文に注目するとよい。
十八、頻出文法問題
①「る」「れ」「ぬ」「ね」「に」「なむ」「なり」「らむ」の識別
②敬語(敬意の方向と口語訳)
③助動詞「む」「る・らる」「す・さす・しむ」「べし」「ず」「じ」「まじ」「き」「けり」「つ・ぬ・たり・り・なり」「まし」「らむ」「けむ」「めり」「らし」「まほし」
④格助詞「の」「より」「にて」「して」・接続助詞「ば」で」「ものの・ものを・ものから・ものゆゑ」・終助詞「かも・かな」「かし」「なむ」「ばや」「もが・にしかな・てしがな」・副助詞「だに」「さへ」「し」・係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ」「やは・かは」「もぞ・もこそ」「こそ―已然形、」
⑥文法問題は、上を見て、下を見て、訳すという手順で行う。
十九、ジャンル別読解法
物語・日記では話題・展開・状況をつかむ。随筆・評論では論点・主張をつかむ。
(説話の読解法)
①世俗説話(一般的な民間伝承)と仏教説話(仏教関係の伝承)とがある。
②「今は昔・昔・中頃・近頃」ではじまり、文末に「けり」がつくことが多い。
③文章の末尾にまとめがくるので、必ず確認する。
④話の展開を予測しながら読む。
⑤すばらしい和歌を詠んだら願いが叶うという歌徳説話も多い。
⑥説話にありがちな内容としては、仏教の霊験話をあげて仏道のありがたみを説くもの・すばらしい求道者、歌人、為政者の話・不思議な霊験談・有名な人物の回想記がある。
(物語の読解法)
①歌物語は最初に和歌を確認して、和歌と本文とを比較しながら読み解く。
②語り手のいる物語では、語り手が登場し、主語のない心情語・謙譲語の主語は語り手(私)と考えて読む。
③地の文の尊敬語の有無に気をつけて読み解く。
(日記の読解法)
①作者が登場する。主語のない心情語・謙譲語の主語は作者(私)と考えて読む。
②助動詞「き」の主語は「私」で、「けり」の主語はその他である。
③和歌にも注意。和歌を確認して、和歌と本文とを比較しながら読み解く
(随筆・評論の読解法)
①随筆は日記に主張の入ったものとして読み解く。
②作者が登場する。主語のない心情語・謙譲語の主語は作者(私)と考えて読む。
③助動詞「き」の主語は「私」で、「けり」の主語はその他である。
④和歌にも注意。和歌を確認して、和歌と本文とを比較しながら読み解く
⑤主張の部分に注目する。主張の部分は、係り結び・「べし」・断定「なり」・願望「なむ・ばや・がな」にあらわれやすい。
二十、構造的読解法(大きくつかむ文章の切り方)
①接続助詞の「て」「で」「つつ」の下では切らない
②接続助詞の「ば」「を」「に」「が」「ど」「ば」の下で切る
③「。」の下で切る
④時の表現・場所表現の下で切る
⑤挿入句は(  )でくくる。
⑥連体形が準体言の省略のとき、その下で切る。
二十一、出典別読解法
①有名な作品は、内容をある程度知っておくことが必要である。出題者もある程度知っていることが前提で出題してくることが多い。
②『和泉式部日記』では、作者自身のことを「女」と書いている。
③『源氏物語』では、①光源氏への敬語(尊敬語)は地の文では一つ②地の文での二重敬語は天皇に対するもの③「泣く」場面が多く、「あはれ」が中心。
④『枕草子』では、①冒頭が「…は」で始まる段は、「…」が主題で、「…もの」ではじまる段は、「…」が中心感情②地の文で二重敬語がつくのは、「天皇」「中宮定子」「道隆」「道長」ぐらい③「をかし」が中心的感情
⑤『大鏡』は、作者・語り手・登場人物の三重構成
⑥『大鏡』などの平安時代の作品では、「入道殿」は「藤原道長」、「帥殿」は「藤原伊周」、「中の関白」は「藤原道隆」をさすと見てよい。
⑦『平家物語』などの中世の作品では、「入道殿・入道相国」は「平清盛」、「小松の大臣」は「平重盛」、「鎌倉殿」は「源頼朝」、「判官・九郎殿」は「源義経」をさす。
⑧説話には、①仏を讃える話②歌人・為政者・偉い僧侶の話③不思議な体験談④有名な人物の回想記が多い。
⑨近世(江戸時代)の文章は、国学者の書いた文章・近世小説・俳論の三つが出題されている。国が卯者の書いた文章は、平安時代の文法を守ろうとして書かれている。それに対して、井原西鶴に代表される近世の小説は、文法は守らずに口語も多用し、「て」で文章になかなか切れ目が来ない。俳論の場合には、俳諧の用語だけではなく、書き手に漢詩文の素養があることが多いので格調がたかい。そのため、ある程度の漢語の知識も要求される。