文字と心理

○筆跡心理学
「書は人なり」と言われます。文字には人の性格や深層心理が反映されます。フロイトによると、「無意識の世界が人間の何気ない行動や文字をコントロールしている」ということができます。性格(パーソナリティ)は変えることができるのでしょうか。意見の分かれるところでしょうが、先天性と後天性とに分けて考えると、先天性は基本気質であり変えることはできませんが、後天性は環境や職業などによって形成されるので変えることができます。心理学者のウィリアム・ジェームスは、行動と心・性格との関係を密接なものと位置づけました。行動が感情をコントロールできるというわけです。例えば、「悲しいから泣く」のも真実ですが、「泣くから悲しい」というのも真実なのです。行動の中に「文字を書く」という動作も含んでいます。つまり、「性格が文字に表れる」のも真実ですが、「文字が性格をつくる」のも真実なのです。しかし、具体的にどのような文字がどのような性格かは、あまり日本では盛んではありませんでした。ヨーロッパでは、筆跡心理学(グラフォロジー)は100年以上の歴史があり、大学に講座もあるほど盛んに研究され、フランスでは国家資格になっているのと対照的です。書道家も科学的に分析を行ってこなかったのが原因と考えられます。その中で、書家の森岡恒舟[もりおかこうしゅう]氏(東京大学の文学部心理学科卒業)が綿密な調査を経て、日本で初めて「筆跡心理学」を体系化しました。以来、森岡恒舟氏とその弟子を中心として、筆跡心理学は確実に認知されてきています。筆跡で性格が読めるので、たいへん便利です。しかも、心理テストの結果とだいたい同じようになるのでその的中率には感心します。また、開運という視点では、習得しておきたい筆跡としては、次の三つになります。
○弘法型
○開空間広型
○等間隔型
これらの縁起のよい筆跡で名前を書くようにすれば、心地よくなるものです。筆跡心理学の専門家は、あまり画数による姓名判断を気にしません。たとえ悪いといわれる画数でも、よい筆跡で書けば開運できることを知っているからです。そして、よい筆跡でサインするのが楽しくなります。このように、性格が読めますし、開運にもつながる筆跡心理学はぜひ習得しておくとよいでしょう。また、書道教育の上では、
○臨書―エネルギーの吸収
○書道の訓練―知力開発・性格淘汰・社会性訓練
になるといわれています。「文字には霊力がある」と漢字学の大家であった白川静氏は述べましたが、よい筆跡は人に好印象を与えるから不思議です。また、古典をいわれる名筆は、だいたいよい筆跡で書かれています。そのため、筆跡心理学とあわせて古典の臨書も行って書道も学ぶと、精神安定剤にもなって(これを「カイゼンヒーリング」と呼ぶ専門家もいます)効果絶大だと思います。
 ペン字の第一人者、山下静雨も次のように述べています。
私は「字は心の顔である」と20数年間いい続けておりますが、字を見て、その人の人柄や人格などを想像することは、私たちの日常において多いものです。とりわけ、よく知らない相手から手紙や書類を受け取ったとき、ひどい右上がりのクセ字だと「気が強くて強情な人ではないか」、また、チマチマとした小さな字だと「器も小さいのではないか」などという先入観を持ちがちです。逆に、のびのびと大きい字を書く相手に対しては、「おおらかな、素敵な人のようだ」などと、会うのが楽しみになったりします。ですから、きちんとした美しい文字が書けるか、書けないかで、将来まで決まってしまうといっても、過言ではないわけです。