読書の考え方

○私に影響を与えた読書の考え方

竹内均
車内の読書・読書は人相を変える・つるったぐり読書法
渡部昇一
500冊読めば人相が変わる・歴史小説の効用
梅棹忠夫
読書とメモの関係・京大型カード
加藤周一
読書と心の安定・隙間時間の読書
清水幾太郎
関連本をたくさん読む
(橋本武)
スローリーディング
和田裕美
小説は表現力を高める
安岡正篤
かたい読書(古典)とやわらかい読書
(森信三)
伝記の効用
外山滋比古
α読みとβ読み−既知のものと未知のもの−
(七田眞)
波動速読
(栗田昌裕)
能力開発と速読・蝶のように読む
(今村洋一)
アチェンジで読む









○読書についての考え方

知性を磨くには、読書は欠かせませんが、その読書法として精読・濫読・速読などがあります。また、本のジャンルもさまざまなものがあります。そこで、知的生産としての読書について考察してみます。
第一に、読書は何のために行うのかを考えてみます。読書は単なる知識のレベルに留めるためのものではないでしょう。孔子のいう、君子(教養人)と小人(知識人)とを分ける読書の方法があるはずです。哲学者で教育に重要な発言をした森信三氏は、読書は知識を増やすためのものではなく、体に栄養が必要なのと同様に、心の栄養になるものでなければならないと述べています。そのためには、偉人伝、人生哲学、和歌集(特に『万葉集』や島木赤彦の歌)などがよいとし、雑多な知識が統合されると述べています。この論からもわかるとおり、仕事のために知識だけを得るのも止むを得ない面もありますが、真に人間として心の栄養となる読書を心がけたいものです。
第二に、読書を行う空間について考えてみます。何かと忙しいとどうしても、読書をする時間が取れなくなってくるものです。しかし、忙しい合間を上手に使って読書を行うことが重要です。文芸評論家の加藤周一氏は、隙間時間を利用した読書が実は必要であることを力説しており、頭脳の活性化と関連させて述べています。陽明学者であった安岡正篤氏は、「硬い読書」と「軟らかい読書」とに分け、普段は中国哲学などの古典の「硬い読書」を精読することを勧めていますが、それだけでは頭が硬くなってくるので、「軟らかい読書」も混ぜることを勧めています。そのためにも、「寝る前」「御不浄」「車中」での読書を行う時間を作ることが必要であると述べています。中国では、小説はつまらないものとして軽視され、歴史書中国哲学書・漢詩が権威を持ってきました。ある意味で、小説は「軟らかい読書」ということに分類してよいでしょう。人間は、だんだんと思索していくために、通常は硬い読書が中心となるものですが、たまには、柔軟性を保つために軟らかい読書も織り交ぜたいものです。
第三に、読書の幅を広げていく方法を考えてみます。一般に、ある気に入った本の参考文献や引用文献としてあがっているものを順に読んだり、特定の著者の他の本を読んでみたりすれば、次々に読みたい本が出てくるものです。地球物理学者の竹内均は、一冊の本からその中で紹介または引用されている本を順番に読むようにすれば知識が次々に増えるので、効果的であることを述べました。この方法を「つるったぐり読書法(芋づる式読書法)」と命名しています。この方法は、社会学者である清水幾太郎氏のいう、「おおげさに準備する」ことと一致しているとも考えられ、学者・研究者と呼ばれるタイプの人々が行う典型的な読書法です。近代日本文学専攻で、評論家の谷沢永一氏は、ある特定の著者を「全部読むべき著者」と「代表作だけ拾い読みする著者」とに分ける方法をとっているようです。
文化人類学者の梅棹忠夫氏は『知的生産の技術』の中で、江戸時代の新井白石の例を示しながら、手帳やカードなどのメモを書き付ける読書の仕方を述べています。この方法は、渡部昇一氏に引きつがれているといえるかもしれません。英文学者で評論家の外山滋比古は、既知のものを読む「α読み」と未知のものを読む「β読み」とに分けています。その上で、未知のものを読む「β読み」のほうを推奨しており、読書の大切さを説いています。この方法は知的好奇心には欠かせない読書法といえます。この方法は心理学者の多湖輝氏の述べる「なぜ・なに」という精神の重要性と一致しているのです。英語学者で評論家の渡部昇一氏は、『知的生活の方法』で、一回目に本を読んだときに線を引いておき、そののち、その線を手がかりに情報カード(京大型カード)に日付とタイトルを記入するというスタイルをとっており、それらを分類していくという方法をとっています。この方法は、知識を確実なものとして習得することができ、多くの分野の著作を生み出してきた発想の原点でといえるでしょう。


参考−七田眞『いかに生くべきか』に見る読書論−
○書を読めば万倍の利あり(『古文真宝』)
安岡正篤の本は、心を磨くのによい。
○ドイツの学者オスワルトの「偉人や成功者たちの共通の条件」
1プラス思考
2読書
○本は広く読むのがよい。月に30から50冊の本(ビル・ゲイツ
○伝記は、魂に大きな火を灯す
○「智恵は他なし。書を読むと読まざるにあり」(『呻吟語』)
○新しいアイデアとは、既存の情報の、まったく新しい異種結合である(仏・ポアン・カレ)
○群書を雑看する勿れ(古賀穀堂
○多読と精読
○小説などむさぼり読むな
○成功者の特徴
1瞑想する習慣がある
2メモ魔である
○座右の書を持つ
○古典がよい
○生きた読書
○少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、則ち老いて衰へず、老いて学べば、則ち死して朽ちず。(佐藤一斎『言志四録』)