受け身の理論

受身文の分類と理論−松下文法を中心に−


現在の受身文の分類研究において果たした松下大三郎の業績は、先行研究でも必ず引用されるほどである。松下大三郎を嚆矢とした現代日本語の受身文の理論的研究を本章では概観し、松下大三郎の受身の論の中には、現在の最新の研究でも言われている理論の中にも、松下大三郎の著作にもその萌芽が見られる箇所があることを指摘し、松下大三郎の受身の分類と理論の研究史の中に果たした意義と役割、および指摘されていなかった点を明らかにし、再評価を試みる。現代日本語の受身文の研究史の上で、重要な論を展開した人物として、林(2009)は、「ヴォイスに関する研究」として「金田一春彦・鈴木重幸・仁田義雄・寺村秀夫・高橋太郎・益岡隆志・村木新次郎・野田尚史・早津恵美子・佐藤琢三」を取り上げ、「現代日本語の受身文」に関する研究として「山田孝雄・松下大三郎・三上章・久野翮・黒田成幸・益岡隆志」を取り上げている。川村大(2012)は、ラレル文の研究の上から、「」を取り上げている。
また、益岡隆志(2003)は、現代語(日本語話者の母語)を対象として具体的な言語事実の観察を重視する文法研究の流れを「日本語記述文法」と呼び、その流れを戦後に限定した場合、以下の三つに分けられるとしている。
1奥田靖雄をリーダーとし鈴木重幸や高橋太郎などがメンバーである「言語学研究会」(教科研グループ)の流れ
2南不二男の研究の流れ
3三上章から寺村秀夫に受け継がれた流れ