江戸時代のことば
(江戸時代のはなしことば)
【武士の決まり文句】
大義である・・ご苦労さん
まかりある・・「有る・居る」の丁寧語
物申す・・抗議する
おさおさ―打消・・めったに―ない
御光栄・・「来る」の尊敬語
ちょこざいなり・・なまいきな
やくたいもない・・役にも立たない
ぜひもない・・やむをえない
慮外な・・そんなこと思いもよらない・思いがけない・意外だ
曲げて・・何がなんでも
かまえて―禁止・・絶対に―するな
ひらに・・何とぞ
一つまいろう・・まずは一杯
過ごされよ・・気楽に思う存分飲め
お流れちょうだい・・ひとの盃で飲むときに言う
手もと不如意・・当座の持ち合わせがないときに言う
片腹痛い・・はたで見ていてはずかしい
異なこと・・また妙なことを
これはしたり・・これは驚いた
面妖な・・まったく不思議だ
いかさま・・なるほどな
念には及ばない・・確認するまでもない
びろうながら・・穢い話をするときに使う
卒爾ながら・・突然のことで失礼ですが
それは重畳・・それはたいへんけっこうなことだ
恐悦至極・・とてもうれしいときに言う
掬す・・両手ですくい取る
(用例)
「大義なれど、百の餅船はととがするぞ」(『浮世草子』)
「浪人売れがたき世なれば、いづれも是非なく里の月日を重ねぬ」(『日本永代蔵』)
「慮外ながら、これ一つ腰へ」(『武家義理物語』)
「これはしたり、大事の用をとんと忘れた」(『伊賀越道中双六』)
「ただ今までたしか十両見えしに、面妖の事ぞかし」(『西鶴諸国ばなし』)
「はあ、ねっから酒が足らぬようだ。もう二合やらかさう」「いかさまなあ」(『東海道中膝栗毛』)
「とかく食物が納まりかねまして、食べると、びろうながら、吐きまする」(『浮世風呂』)
【酒と色関連のことば】
不調法・・たしなみがない
酒毒・・アルコール中毒
長火鉢・銅壺・・晩酌のセット
岡惚れ・・密かに抱く恋心
喋喋喃喃・・男女が小声で楽しそうに語り合う様子
なか・・吉原
蕎麦きり・・蕎麦
岡場所・辰巳風・・手ごろな遊郭
敵娼・・遊里で相手をする女
手折る・・花を折るように女を物にする
夜鷹・・街角に立つ女
色子・・男娼
出合茶屋・船宿・・男女の密会場所
相対死に・・心中死に
渋皮がむける・・垢抜けして世なれた人
莫連女・矢場・・世間ずれした不良娘
肉置き・・女性の体の肉づき
婀娜っぽい・・色気があってなまめかしい
鉄火な女・・威勢のいい女
新枕・・新婚夫婦の初夜
赤縄・・男女を結ぶ赤い縄
夫婦は二世・・夫婦は現世と来世にまたがる縁
髪結いの亭主・・茶の間でごろごろしている亭主
(参考)
提灯で夜鷹を見るは惨(むご)いこと(古川柳)
小当たりの的になってる矢場(やば)娘(古川柳)
「二世までかはるな、かはらじ」(『武道伝来記』)