井原西鶴の真髄

 おはようございます。今回は、井原西鶴について書いてみます。みなさんは、江戸時代の井原西鶴という人物は、どのように考えていますか。よく、小学生・中学生の日本史の歴史の教科書に『好色一代男』が盛んに載っていますが、あれはよくありませんね。なぜ、載せるのか不思議です。「井原西鶴を扱います」と講座でいうと、一般の方は「『好色一代男』ですか」と聞かれてしまうのです。でも、よく考えてみてください。日本の古典の中で、世界的に認められているのは、紫式部の『源氏物語』と井原西鶴の二人だけですよ。『好色一代男』で評価されるはずがないではないですか。井原西鶴の真骨頂は、町人とお金の成功法則を扱った経済小説の祖、『日本永代蔵』と『世間胸算用』なのです。人生論にもなっていて、たいへん深い内容で、いまでも大阪の町人には影響を与えています。もっと一般にも読まれてよいと思っています。次に評価されるのは、江戸時代の女性の自由恋愛を描いた『好色五人女』です。道徳的に不倫は許されない時代にあえて、自由恋愛を行って罰せられた五人の女(実話)を描いたもので、当時としては画期的な試みでした。
 というわけで、井原西鶴が世間では誤解されているようなので、どのような点で評価が高いのかを書いてみました。作品と概略をまとめておきます。

(作風)
①大阪の町人。初め談林派の俳諧師で、後に浮世草子作家に転じた。
②人間や世間を冷徹な目で見つめ、現実をリアルに描いた。
③小説はすべて短編で、巧みな話術と簡潔な文章が特色。

(代表作)
①好色物
好色一代男
主人公、世之介の好色生活を五十四帖に描く。
好色五人女
当時の巷談に取材した五つの恋愛短編集
『好色一代女』
老尼が自己の生涯の好色遍歴を語る形式。
武家
『武道伝来記』
三十二の独立した敵討物語。
武家義理物語
義理に生きる武士の二十七の説話から成る物語。
③町人物
『日本永代蔵』
金持ちになる秘訣を三十章に叙述したもの。
世間胸算用
晦日における悲劇・喜劇を二十章に叙述したもの。
④説話物
西鶴諸国咄』
諸国の珍談・怪談を三十五に叙述したもの。
『本朝二十不孝』
親不孝な者を題材にした二十章の説話。
『本朝桜陰比事』
裁判を扱ったもの