続・古文の大学別の流れ

 前回のブログで、古文の参考書の世界では、旧東京教育大学小西甚一・森野宗明・土屋博映)と國學院大學(桑原岩雄・小杉商一・千明守・関谷浩)の流れがあることを書きました。
では、東京大学出身者の古文の学習参考書はどうなのかということを書いてみます。意外と、東京大学出身者の予備校講師で傑出した著作を残している人物はすくないのですが、クリスチャンで元聖心女子大学の教授・元駿台予備校講師であった、『古文読解教則本』を書いた高橋正治氏、中里の即決古文シリーズを書いた元代々木ゼミナール講師の中里公俊氏は、注目に値します。
 古文の予備校業界は、このように筑波大学(旧東京教育大学・旧東京文理科大学)と國學院大學を中心に展開し、そこに東京大学を加える形で展開してきたのです。この図式は、古典分野の国語学の研究の世界とも一致しています。ここであげた人名のほとんどは、国語学先行者です(高橋氏と中里氏は中古文学の専攻、千明氏は中世文学専攻)。もつとも国語学(日本語学)を専攻する人物の大半は、国語教育や言語学を副専攻にしていますから当然でしょうね。
 他の大学出身者で、予備校講師として傑出した著作を残した人物を調べてみると、それもよい教員との出会いがあり、複数の大学や大学院の出身が多いという特徴があります。環境が人物をつくるといえそうです。