中野式漢文の流れ

 こんばんは。前回、私を開眼させた漢文の本で、中野清氏の本を紹介しました。今回は、その続きです。
 中野清氏は、元代々木ゼミナール講師で、清の時代の小説を大学院では研究していた人物でした。現在は、大学講師・高校講師などの傍ら、漢方薬品の会社社長として活躍しているようです。この中野清氏の書いた『中野のガッツ漢文』(情況出版)という本も、長文読解をしながら漢文の文法を学ばせるようによくできていました。
 この中野清氏の影響は、たいへん大きく、中野清氏の本をいっそう発展させるタイプの本が出版されるようになりました。その中で代表的なものは、斎京宣行氏の『漢文基礎トレーニング』(駿台文庫)や飯塚敏夫氏の『飯塚漢文入門講義の実況中継』(語学春秋社)などです。中野清・飯塚敏夫・斎京宣行といった国文法と漢文法という視点は、予備校の漢文の教授法の一つの流れを作っています。中でも斎京宣行氏は篤学の士で、今後さらにこの教授法を発展させていく段階の作業に着手していましたが、残念ながら二年前に四十代前半の若さで亡くなってしまいました。たいへん惜しい人物をなくしたものです。三人とも早稲田出身か早稲田に関わったことのある人物です。
 このように、早稲田出身の漢文の講師は、たいへん個性的な人物が多いが特徴です。おそらく、藤堂明保氏が学生運動を支持する発言をして、東京大学教授を辞任に追い込まれたあと、早稲田の教授として多大な影響を与えた影響だろうと思います。藤堂明保氏は戦前は中国哲学の研究を行い、戦後は中国語と漢字学の研究を行った、たいへん優秀な人物です。藤堂明保氏ほどの頭脳があれば、私も大成するのでしょうが・・。