私の読書日記−外山滋比古『省略の文学』

おはようございます。今回は、名著を紹介したいと思います。
 最近、再び脚光を浴びている外山滋比古氏ですが、1980年代から1990年代にかけて、外山滋比古〔とやましげひこ〕氏(英語・英文学者)の文章が高校や大学の入試問題でよく出題されていました。この『省略の文学』(中公文庫)もその一つで、世界的な短詩型文学の「俳句」について論じたものです。戦後、桑原武夫〔くわばらたけお〕(フランス文学者)は『第二芸術』(講談社学術文庫)を発表し、俳句についての痛烈な批判を行いました。この影響で俳句は大きな打撃を受けました。まさに、この「第二芸術論」と対照的な一冊が、『省略の文学』(中公文庫)なのです。俳句の中にある論理を、「切れ字」を中心に詳しく説き明かしてくれます。かつて私が中学生に俳句を教えていたときに読んだ本で、俳句の面白さを改めて感じた思い出があります。その意味で私の俳句の考え方に、大きな影響を与えた一冊と言うことができます。また同じく、外山滋比古氏の『日本語の論理』(中央文庫)では、日本語の面白さを教えてくれますので、あわせて読んでみて下さい。鋭い言語観によって日本語と英語とを比較しながら行う、日本語論は優れたものです。また、池上嘉彦〔いけがみよしひこ〕氏(英語学・認知言語学者)の『「する」と「なる」の言語学』(大修館書店)は、日本語をベースにして考察したあと、英語との違いを認知言語学的な視点で論じたもので、著者の頭のよさが感じられます。この本の中でも「俳句」の分析が行われていますので、読んでみるとよいでしょう。坪内逍遥〔つぼうちしょうよう〕(英文学者)・米川正夫〔よねかわまさお〕(ロシア文学者)・吉川幸次郎〔よしかわこうじろう〕(中国文学者)・福田恒存〔ふくだつねあり〕(英文学者)・丸谷才一〔まるやさいいち〕(英文学者・文芸評論家)など外国語の専門家を思い浮かべると、本当にすぐれた外国語の研究者とは、言語全般にわたって言語観が卓越していることに改めて気づきます。