サンソムとジョーデンの受身記述

時代は下るが、サンソム(1928)の日本語研究も欠かすことはできない。サンソム(1928)は、いくつかの場所に分けて説明している(p132,160,259,314)。該当箇所をまとめてみると次のようになり、西洋人の日本語研究を踏まえたものとなり、英語では受動文で示すものを、日本語では能動文で示すケースに気を配る記述があるのは、特徴的である。また、非情の受身非固有説に近い考え方は、序文に影響を受けたと示してある山田孝雄(1908)の影響と考えられる。
○日本語では、受身表現は直接的な受身表現ばかりではないので、能動文の方が好まれる。
○日本語には自動詞の受身がある。
○受動動詞の形で可能の意味も含んで表現する。
○非情の受身は、無機質なもののときに表現される。

長沼直兄はパーマーの影響を受けたと言われているが、パーマーの流れは、フリーズ、そしてジョーデン(1963)と引き継がれており、長沼直兄はジョーデンを意識していたと言われている。ジョーデン(1928)は、「Lesson36」で受身を扱い、ドリルの部分は、パーマーの流れを汲んで、長沼直兄と同様に置換表を用いている。主な受身記述の特徴を整理してみると、以下のようになる。
○直接受身と間接受身があり、日本語には間接受身がある点が異なる。
○日本語には自動詞の受身がある。
○主語は「ハ」「ガ」で示され、動作主は「ニ格」「デ格」で示される。「ヲ格」を伴うこともある。
○日本語は非情の受身は好まない傾向が強い。
○使役受身の用法がある。
このように、ジョーデン(1928)の記述は、長沼直兄と似た記述になっているのは、お互いに意識したためか、両者ともパーマーの流れを汲むためであると考えられる。