「は」「が」

主語と主題

妹は怪我をしたので、仕事を休みます。
→怪我をしたのも、仕事を休んだのも妹。
「は」は文の最後までをスコープ(支配域)とする機能がある。
妹が怪我をしたので、仕事を休みます。
→怪我をしたのは妹だが、仕事を休むのは私(発話主体)。
「が」は一番近い述語までしかスコープ(支配域)は及ばない。
これは旅行のお土産です。
→ほかはともかくこれ(対比)
これが旅行のお土産です。
→ほかでもないこれ(総記)
これ旅行のお土産です。
→聞き手の注意を喚起(無助詞による主題提示)

「は」は文の主題を示す
(例)
その本は買いました。
→「買う」の対象が「本」
田中さんには会いませんでした。
→「会う」の目的が「田中さん」
太郎は学生だ。(名詞述語文)
空は青い。花子は元気だ。(形容詞述語文)

「は」の対比の働き
(例)
田中さんは来たが、山田さんは来なかった。
コーヒーは飲んだが、ケーキは食べなかった。

「が」の総記の働き
(例)
この会の主催者は誰ですか。
私です。
私が主催者です。(主催者は私であって他の誰でもない)


「が」の中立叙述の働き
主題を持たない文(現象文・無題文)・・話し手が発話の時点で、認識したものをそのまま叙述。
(例)
犬が走っている。
空が青い。
雨が降っている。

新情報「が」と旧情報「は」
(例)
昔あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に生きました。おばあさんが洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてきました。
野田尚史の説
【伝えたいこと】が【主題】
【主題】は【伝えたいこと】
(例)「あいつが許せない」だと、許せないのは、あいつであり、「あいつは許せない」だと、あいつについて許せるか許せないかと考えると「許せない」になる。

「象は鼻が長い」−二重主語構文−
「は」が文の主題を示し、「が」はあとの述語が示す属性を持つ主体を示す。
(例)
弟はサッカーが上手だ。
兄はスポーツが得意だ。
→能力が発揮される対象の分野を「が」で示す。
述語は能力や可能性(できる・わかる・話せる・上手だ・下手だ・得意だ)、好悪の感情(好きだ・嫌いだ)。
東京は人口が多い。
田中さんは息子さんが大学生だ。
象は鼻が長い。
→「全体は部分が述語」の構造。「は」を「の」に入れ替え可能。
「は」が主題を示し、「が」が主題の一部分の状態を示す。
あるものの部分の属性を記述することで、結果として全体について述べる形になる。
春は桜がきれいだ。
→春を主題にして、残りの部分でその主題について述べる文。
「は」を「の」に入れ替え不可能。
日本は富士山が有名だ。
→日本を主題にして、残りの部分でその主題について述べる文。
「は」を「の」に入れ替え不可能