古文の学習参考書(1)

 こんばんは。私は、国語の参考書のソムリエになろうと思い、塾・予備校の仕事をはじめた15年前から、戦後に書かれた国語の参考書をチェックしています。そこで、今までの調査を生かして、今回から、国語の学習参考書について書きたいと思います。
 受験用の古文の学習参考書の中で金字塔的な本として、小西甚一氏の『古文研究法』(洛陽社)があります。この本は、従来の文学史・文法・単語の他に、あらたに「精神的理解」という項目を立てています。この「精神的理解」は、現在では「古文常識」という言葉で、多くの学習参考書に採用されています。その後の学習参考書は、みなこの本の影響を受けており、この本を切り貼りしたような参考書も多数あります。その意味でも、記念碑的な参考書です。水準としては、大学入学してからも使える内容になっており、現在では教師用の古文の学習参考書として用いられることが多いようです。受験と教養とをつなぐ本だといえるでしょう。
 小西甚一氏は、昨年亡くなりましたが、筑波大学名誉教授で、専門書としては『俳句の世界』『文鏡秘府論考』『日本文芸史』などの名著を残しています。特に、『日本文芸史』は大著で、高く評価されています。また、国語学者佐伯梅友氏(東京教育大学名誉教授)の影響で、『国文法ちかみち』(洛陽社)という、本格的でユニークな本も書き残しています。才能のある、ダイナミッイクな学者といえます。