アーサー・ウェイリーと『源氏物語』

○アーサー・ウェイリーと『源氏物語
 アーサー・ウェイリー(1889―1966)は、イギリスの東洋学者で、中国や日本の古典を翻訳したことで知られる人物です。『源氏物語』の最初の英訳者として知られています。
 作家の正宗白鳥は、「アーサー・ウェイリーの『源氏物語』を英語で読んで、『源氏物語』の面白さがわかった」といったほどです。わかりやすい表現にしてあり、その日本語版が平凡社文庫から発売されています。また、アーサー・ウェイリー漢詩の英訳は、わかりやすく彼の英文を通じて初めて漢詩・漢文の面白さを知る人は多かったようです。
 英文学者で伊那谷老子と呼ばれて尊敬されている、加島祥造(かしましょうぞう)氏は、「彼の漢詩の英訳には、まるで口語体で書かれているような、しゃべり言葉の生き生きとしたリズムがありました。文語体の難解さはなく、白楽天が直接、僕に話しかけてくるような気安さがあったのです。」と述べています。
 多少の誤訳は指摘されるものの、アーサー・ウェイリーは、東洋の古典を紹介することに大きな功績を残しました。