現代文の参考書の歴史(5)

 おはようございます。今回は、「堀木博礼」(ほりきひろのり)氏をとりあげたいと思います。まちがいなく、現在の予備校の現代文に大きな影響を与えた人物の一人です。知識量、勉強量ともに群を抜いていました。もともとは大学の教員であり、東京大学を二回卒業(国文科とフランス文学科)するなど、知を重んじた方でした。特に、記述問題の解法に定評がありました。東大の問題を的中させたり、現代文に開眼させたりして、堀木博礼氏の薫陶を受けた予備校講師は数多くいます。あまり著作は残しませんでしたが、Z会から『入門編・現代文のトレーニング』と『私大編・現代文のトレーニング』がまだ発売されていて、読むことが出来ます。
 私は、かつてラジオ放送の「旺文社のラジオ講座」のファンでした。その講座に堀木氏が登場して、聴いていました。淡々とした語り口調でしたが、内容と教材はすばらしいものがありました。田村の現代文よりも、本文読解中心で本質をついている気がしました。高齢になってからは声が通らなくなり、講義は「堀木の子守唄」といわれていましたが、すばらしい内容でした。第一線を退いてからは、多くの著作を書き残していただきたかったのですが、堀木氏は、自ら命を絶ちました。そのまま死なせるには実に惜しい人物でした。不勉強でパフォーマンス中心で人気だけを集めている予備校講師が増えている現在だからこそ逆に、堀木氏のような知を重んじる人物が出てほしいものだと思います。