現代文と背景知識

現代文をテーマ別にわけて記述した本として、森永茂氏の『入試基礎強化・現代文』(学研)という本があります。現在は品切れなので入手は難しいのですが、この本の影響を受けている予備校の講義も多いようです。この本は、早稲田大学石原千秋教授が推奨したことから、古本でも高い値段で取引されているようです。まだ、私が現代文の授業スタイルが確立できていなかったころ、難関大学受験専門塾で、哲学・心理学・社会学歴史学の知識を駆使して博識で面白い講義をする講師がいました。彼と話をしていたときに、この『入試基礎強化・現代文』に影響されていたことを知りました。そこで、私も隅々まで読んでみました。すると、その意味がわかりました。つまり、著者の森永茂氏は、フランス文学・哲学の専門家であるために、教養として現代文をとらえていました。私が一読した感じでは、『ことばは力だ・現代文キーワード』(河合出版)の応用編であると思いました。たしかに、このように講義すれば教える側も勉強になるし、受講生も満足感や達成感があると思いました。それ以来、この本のように現代文の背景知識を注入するようになりました。さらに、その方針を徹底するきっかけになったのは、大手予備校の講師控え室でのことでした。早稲田大学近代文学の博士号を取得した予備校での先輩がいました。その先輩は、大学の講師もやっていた方で、「前田愛」「石原千秋」「小森陽一」といった、近代文学でも旧来の「作品・作家論」ではなく、「テクスト分析」を重視する方でした。その先輩との会話でも、たえず歴史・文学・社会学の融合でとらえる方法が話題になっていました。たいへん興味ふかく耳を傾けました。そこで感じたのは、これからは現代文も背景知識で読む時代なのだということでした。もし、接続語・指示語などの外面的なもので読んでいて、内容がつかめないのであれば、背景知識を高めるように勉強してみてはいかがでしょうか。