『徒然草』の価値

徒然草』の価値
 『徒然草』は、14世紀に兼好法師(俗名は卜部兼好。京都の吉田神社の神官の子。卜部家は兼好の死後「吉田」姓を名乗る)の書いた随筆です。兼好が生きていたころは、兼好は歌人として知られており、『徒然草』は読まれませんでしたが、死後、連歌師の間で教養書として読まれ、『徒然草文段抄』などの古注も出ました。いまや、『徒然草』は研究のレベルでは研究し尽くされた感じがあります。しかし、人生論としては、まだまだ学ぶことの多い点が多く書かれています。小林秀雄も、モンテーニュ以上の随筆と絶賛するほどです。では、内容と特徴を簡潔にまとめてみます。
(内容)
○多方面な教養をもつ著者が、興に従って書いた随筆。
○二四〇余段の短章から成る。
○求道・処世論・趣味論・自然観照・考証などの多岐にわたる。
(特徴)
○物事を多面的に観察し、合理的・常識的態度で書いている。
儒教・仏教・老荘思想のほか、尚古趣味や享楽思想が混合している。
○文体は当時新興の和漢混交文と、流麗な擬古文が混在する。