シンクロニシティとタロット

心理学者のユングは、シンクロニシティということを大切にしました。つまり、「物事は偶然ではなく、必然である」としました。易やタロットを行うときも、そのカードは必然があって出たと考えるのです。そう考えると、タロットは不思議ですね。ここでは、比較的学問的に書かれているタロットの記事を掲載します。文章は八島高明氏です。




タロット講座


      〜 タロットの謎とその検証 〜

八島高明のタロット講座   

近年の占いのなかで、タロットますます人気を得ているようです。なぜでしょうか?

その理由の一つは、タロットの神秘的なイメージにあるようです。タロットにはたくさんの奇抜な絵が使われており、それが見る人の感性を刺激するのでしょう。
どこか不思議でミステリアス、そんなタロットが占いとしての人気を集めるのは、自然の流れかもしれません。

しかし、タロットの研究をすると、そんなタロットへの過剰な期待と思い入れが交錯していることに気づかされます。

そして、タロットをいたずらに神秘化する人たちの思惑が見えてくるのです。本当のタロットとは何か、このページでズバリと検証していきます。




タロットとは何か?その概要

タロットは日本だけでなく、欧米をはじめてとしてアジアでも人気を誇る占いのひとつです。東洋には昔から易学がありましたが、易学の古いイメージと比較して、タロットにはどこか新鮮な印象があります。

タロットを一言でいうと、「タロットとは西洋に起源を持ち、東洋の易と同じようにシンボル的な断片を組み合わせて、運命を占う技術」と、いえるでしょう。



 タロットは22枚のカードからなる「大アルカナ」と呼ばれるカード、そして56枚の「小アルカナ」と呼ばれるカード、あわせて計78枚のシンボルカードを使います。

タロットの世界では、このシンボルカードを使うと、目に見えない世界での出来事、そして人の運命、未来や過去のことを予測できるとされています。





タロットに懐疑的な人の疑問

占いに懐疑的な人は、こう考えるでしょう。「どうせ、こんなものはインチキに決まっている。誰かが商売をしようと考え出したのさ」。

実際、私もタロットを始めるまでは、そう考えていました。でも、実際にタロットのシンボル図の意味を覚え、やり方を覚えると、その答えが確かに「意味のある回答」のように思えてきたのです。


そのように言うと、さらに懐疑的な人はこう考えるでしょう。「占いにはフリーサイズ効果というものがある。あなたはこのような性格だといわれると、本当にそのように思えてくるものだ」。

なるほど、たしかに占いにはフリーサイズ効果というものがあり、そう言われると本当にそのように思えてきます。


しかし、と私は言いたいのです。「あなたは自分で一度でもタロットをやってみましたか。どのくらいの時間を研究しましたか?」と。合理主義的なものを重要視するあまり、自分で体験もせずに否定するのは、本当の合理主義者とはいえません。現代ではこのような「えせ合理主義者」がたくさん跋扈しています。


まずは何でも否定せずに、一度は自分で体験してみることです。こんなことを長々と書いたのは、タロットがもっとも占い的なものであり、批判の対象に上りやすいからです。ただ、私自身はタロットの信奉者でも何でもありません。ただ、タロットには重要な価値がある、と考えているだけです。






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タロットの起源とは


タロットの起源を検証していくと、様々な混乱した解釈が巷に流れていることに気づくでしょう。

「タロットは古代エジプトに起源を持つ」
「タロットは古代インドで発生し、ジプシーが西洋に持ち込んだ」
「タロットはバラ十字団が使っていた」
「タロットは魔術の道具として昔から存在した」
「タロットはユダヤカバラ思想を関係がある」。

とにかく、いろんな説があります。


ただ、どれも何らかの物的証拠、歴史資料が見つかっているわけではありません。「古代エジプト起源説」は、もともとは18世紀末のフランスで、クール・ド・ジェブランという作家が提唱しました。

でも、根拠はないのです。ジェブランはタロットと古代トートの書を結びつけようとしましたが、証明資料等などはあげていません。

さらに、ジェブランの説を受けて、エッテイヤという同じフランスの占い師が『タロットと理論の実践』を出版して、エジプト起源説を支持しました。


その当時のフランスは古代エジプトの文物が流行し、いわゆる「エジプト熱」に浮かれていましたので、エジプト説が過剰に神秘化されてしまったのかもしれません。厳密にいえば、タロットの発祥や起源については様々な説があり、いまだに特定できていません。



 ただ、歴史的な資料で見る限り、15世紀の北イタリアが起源という説は注目に値するでしょう。実際にタロットの内容をみると、古代エジプトとかかわりがあるというよりは、内容的には『聖書』と深い関係があるのは明らかです。イタリアはバチカンを抱えたカトリックの総本山。

キリスト教の支配する宗教王国ですから、誰かがその教義を簡易的にシンボライズして、カードの中に盛り込んだのかもしれません。



 実際にカードをみると、大アルカナ2番の女教皇、5番カードの法王、13番カードの悪魔、20番カードの審判、21番カードの世界などは、明らかに『聖書』と深くかかわっていると思われます。タロットの内容と構成を見ると、もともとタロットは、キリスト教の教義を盛り込んで作成され、それが何らかの形で民間に広がっていった、とみるのが正しいのかもしれません。


中世のイタリアでは、貴族が遊戯用のカードとしてタロットを使っていたようです。これには歴史的な資料の証明があります。台帳にタロットの購入記録が残っているのです。さて、タロットの起源についてはともかく、なぜタロットが人気を集めるのか、次にタロットの技術と構成をみていきましょう。





タロットの構成とその意味

タロットは大アルカナと呼ばれる22枚のカードと、小アルカナと呼ばれる56枚のカードから構成されています。アルカナとはラテン語で「秘密」「神秘」を意味しています。以下は大アルカナの構成とその意味(概略)です。



1 魔術師・・・・・・・物事を生じさせる意志的な側面。状況を展開させる力。


2 女教皇・・・・・・・英知的な側面。しばしば英知は女性性で表現される。


3 女 王・・・・・・・物事を生じさせる物質的な側面。豊穣、地母神的なもの。

4 皇 帝・・・・・・・威厳、リーダーシップ、統率力、行動力。

5 法 王・・・・・・・厳正さ、秩序、精神的な高尚さ、宗教心。

6 恋 人・・・・・・・異性、仲間、友人、パートナー的な人間関係。

7 戦 車・・・・・・・身体、物理的な行動力、活動性、物質界の戦い。

8 力・・・・・・・・ ・本能の制御、獣性の支配、無意識の衝動。

9 隠 者・・・・・・・内的な静けさ、知恵の探求、隠棲、不干渉。

10 運命の輪・・・  ・運命の変化点、劇的な変化の時期、カルマの発生。

11 正 義・・・・・・・物事の正しい道理、本来やるべきこと、正しい義。

12 吊された男・・ ・・苦しい状況、逃げられない環境、耐えるべき時期。

13 死・・・・・・・ ・・物事の停止。活動の収束。停滞、機能不全。

14 節 制・・・・・・・節度ある生活、規則正しさ、健全な日常生活。

15 悪 魔・・・・・・・獣性的な本能、怒り、嫉妬、力の支配、否定性。

16 塔・・・・・・・・・傲慢さ、思い上がりからの転落、状況の悪い展開。

17 星・・・・・・・・・理想への憧れ、夢、未来への希望、ロマンティックな願い。

18 月・・・・・・・・・物事の裏的な側面。繊細すぎる感受性、暗い側面。

19 太陽・・・・・・・・物事の表的な側面。快活、明朗な力、明るい側面。

20 審判・・・・・・・・約束の時期、状況の終息、これまでのカルマの清算

21 世界・・・・・・・・新しい世界、新しい状況、幸福な環境。



〔タロットの解釈は固定化されない〕
 以上の解釈は、私自身によるものです。タロットには一般的な解釈というのがありますが、タロットを使う人によって、その解釈は異なってくるでしょう。

それでも良いのです。もともとタロットには固定化された見方はありません。また、他人と同じ解釈をする必要もないでしょう。

人はすべて感性が異っています。ですから、自分自身にあった解釈を採用すればよいのです。

ただ、カードのシンボル原則に従う必要はあるでしょう。全く異なる解釈は、混乱を伴うからです。


タロットは大アルカナだけでも十分に使えますが、細かい解釈をしたい人は、小アルカナも使うとよいでしょう。ただ、小アルカナの解釈は、まだ一般化されていないように感じます。ちなみに私は小アルカナを使用しません。なぜなら、全体の解釈が複雑化してしまい、よけいに混乱するからです。



たしかに、状況によっては使ったほうが良いのかもしれませんが、使いこなすには相当の時間が必要でしょう。そもそも公式化された解釈がありませんので、数秘術を使ったり、ユング心理学を使ったりして、自分なりの解釈パターンを形成する必要があるでしょう。





〔小アルカナとは〕
小アルカナはほとんどとランプと同じもので、4つのスートに分類されます。ハートはカップ、スペードはソード、ダイヤはペンタクル、クラブはワンドとなります。以下の意味があります。


カップ・・・・・・・・愛情、喜び・・・水的な作用
ソード・・・・・・・・戦い、勇気・・・気的な作用
ペンタクル・・・・・・商業、金銭・・・地的な作用
ワンド・・・・・・・・活動、生活・・・火的な作用

タロットの使い方には様々な技法がありますが、正しいやり方というのはありません。自分に一番あったやり方を選択するほうがよいようです。タロットというのは、要は、「内なる心の世界と交流する技術」ですから、色んな方法を試してみて最も扱いやすいと思える技法がベストなのです。




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タロットのやり方

 タロットは一般的に、カードのシャッフルから始まり、カット、ドロー、スプレッドの手順をたどります。シャッフルには2通りの方法があり、一つはスローポークと呼ばれる方法。これはトランプと同様に、一般的なシャッフルです。もう一つはプールと呼ばれる方法で、テーブルの上でぐるぐるとかき混ぜる方法です。(詳細は、タロットの入門編などを参考にしてください)

 タロットをシャッフルしたあと、カットします。カットとは、タロットを3つの山などに分けて、再びまとめることをいいます。これは省略しても構いません。要は、自分独自の無理のないスタイルを確立することが大切なのです。カットの後、ドローを行います。ドローとは、束になっているカードから、答えのカードを引くことです。一般的には上から順にとっていきます。

 次に、カードを広げることを、スプレッドといいます。スプレッドには「ケルト十字法」「ホロスコープ展開法」など、たくさんのスプレッドが考案されていますが、私はもっともシンプルな「一枚引き」を行っています。その理由は、ずばりと答えが引き出せるという理由からです。

たしかにカードをたくさん使い、スプレッドを展開すると見栄えは良いでしょう。タロットの神秘的なイメージを演出することもできます。しかし、肝心のリーディング(解釈)が曖昧になることもあるのです。そもそも、タロットカードで手の込んだ複雑な解釈ができるまでには、相当の時間が必要になるでしょう。忙しい現代人には「一枚引き」でも良いのではないでしょうか。

タロットを何に使うのか、目的を明確にすると良いでしょう。私はほとんどの場合、身近な人のリーディング、自分の内的な面のリーディングに使う程度なので、それで十分なのです。いたずらに複雑なテクニックに走る人を見ると、本当に正しい解釈ができているのか、疑問がでてきます。





タロットの世界を検証する


タロットのシンボルやその構成を見てみますと、タロットがキリスト教の様々なエッセンスを、絵を使ってシンボライズしたものであることは疑えません。

中世のヨーロッパは神の時代でしたから、一般大衆の間でもその教義を理解しやすくするために、このようなカードが考案されたのかもしれません。


ただ、タロットがキリスト教の枠を超えて、アジアでも人気を得ているところをみると、それが単にキリスト教だけにとどまらず、タロットが普遍的な価値を持っていることに気づかされるでしょう。

実際にタロットをやってみればわかりますが、そのシンボル体系や構成は、私たちの内面世界を上手に表現しているのです。




そのシンボリズムを見れば、これが古代や中世の神秘学に精通した人物によって作られたのは明らかです。特に大アルカナと呼ばれる22枚のカードは、人間の集合無意識的な内面世界をよく表現しています。ちなみに、私の大アルカナの解釈を内面世界との関連でいいますと、



 「0のカード愚者」は、非創造のカオスの世界を現したものであり、

 「1のカード魔術師」は、創造の世界において宇宙を生成していく神(人)の意思

 「2のカード女教皇」は、宇宙の森羅万象をつかさどる神の知恵の側面を、

 「3のカード女王」は、物質的な世界を生成していく神の物理的な側面を表します。

そして、以下に4〜6のシンボルカードがつづき、「7のカード戦車」では、戦士(人間の魂)が乗る器である物質界をあらわします。この1〜7のカードは、世界を構成する「7つの顕現された次元」を象徴しているのかもしれません。キリスト教ユダヤ教では7は聖なる数であり、神を象徴するものです。一週間は7日間であり、創世記にでてくる神は7日間で世界を創造したといわれます。


 以後、20番カードの「審判」は最後の審判を表現し、21番のカード「世界」は、神の国、至福の千年王国を表現しているようです。タロットカード全般にいえることですが、タロットは神秘世界と人間の内界の関わりを上手にシンボル化して、記述しているのです。そこには、たしかにキリスト教という土壌がありますが、キリスト教が世界中に広がった今日、それが単に西洋世界にとどまらない、汎世界的なものと見なしても間違いではないでしょう。

〔タロットは人間の深層心理の現われ〕

タロットを心理学で解釈する試みは、すでに始められています。

タロットはもともとは遊戯用として北イタリアに広がりましたが、それが占いに取り入れらて世界中に広がったのは、そこに参加してきた人々の存在が大きいのです。

作家のクール・ド・ジェブラン、占い師のエッテイラ、魔術師のエリファス・レヴィ黄金の夜明け団のウェイト、著名な魔術師アレイスター・クロウリー、こうした人々の活躍でタロットは普及していきました。


特にタロットが魔術の道具として使用されたのは、別に驚くことでもありません。

魔術とは本質的に、内的な自己と向き合うことだからです。魔術師は様々なシンボルを使用します。シンボルはいわば、潜在意識の回路を開くための道具なのです。ナチスドイツが逆カギ十字を使い、戦争の士気を高めたことは有名です。人間はシンボルリックなものをみることで、普段はあまり意識しない、潜在意識が活動をはじめるのです。


タロットカードとは、こうした人間の潜在意識の構造を応用したものと考えることができるでしょう。神秘学的な深層心理の知識をシンボル化して、それを上手に構成しているのです。


タロットの技法とは、まさにカードの描いている神的世界と、それに関わる人間世界の交流とも言えるでしょう。これは東洋の易学も同様な考え方であり、易学もやはり宇宙と人間の関わりを東洋風に記述したものなのです。そのスタイルはまったく異なるとはいえ、神的次元と人間の交流という根本的な目的は、同一のものだといえるのかもしれません。




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タロットの原理とは何か?

さて、タロットはキリスト教の神秘思想が入っていることからも分かるように、実に奥深いものだといえます。

しかし、タロット占いの技法がそれを使う人にとって役に立つかどうかは、それを使用する人の能力に大きくかかっています。



なぜ、タロットは他人の深層心理を読めるのでしょうか。また、近未来のことを占えるのでしょうか。

その答えは、人間の心理構造の中にあります。趣旨が逸脱するので、ここでこれ以上詳しくは書けませんが、簡単にいいますと、タロットの答えを出しているのは、自分自身の超自我なのです。

超自我という言葉は、一般的ではないので理解しにくいかもしれませんが、超自我というのは「自分自身の自我意識の、さらに上にある意識」です。


これを古代風に「魂」と言い換えても良いでしょう。精神分析創始者ジグムント・フロイトは、『精神分析』のなかで超自我の検閲機能について詳細に解説しています。

超自我は、私たちを導く親のようなものです。善意ある行為、良識的な判断、強い意志力は、この超自我からやってきます。超自我でも優れたものは、いわゆる超能力を使用することができます。近未来を予測したり、他人の深層心理を読み取ったりできるのです。


タロットは、この超自我と交流する技法なのです。ですから、もし占いをする人が自己の内なる心(超自我=魂と呼ばれるもの)との交流回路が閉ざされていれば、的中率はぐんと下がり、タロットは余計に混乱を与える道具となるかもしれません。


しかし反対に、占いをする人が自己の心(魂)と深いレベルで交流ができていれば、タロットの的中率はぐんと上がるでしょう。

人によっては、正確に過去や近未来のことも読み取れるようになるかもしれません。こうした能力の全ては、「それを使う人の内的な才能(魂)」によるのです。


ですから、場合によっては、すぐにタロットの力を使えるようになる人もいるでしょうし、かなり練習をつんでもなかなか上達しない人もいるでしょう。

ただ、多くの人の場合は長い期間修練を積むことで、確実に上達できるでしょう。また、タロットには未知の事を知る以外にも、宗教次元に眠る自己の心(魂)との交流という大切な目的があるのです。


ただ、タロットを過信してはいけません。超自我といえども、100%正しい判断ができるわけではないからです。私は以前、タロットを過信して大失敗をしたことがありました。超自我でも、自身のカルマ的なものは理解できないのです。タロットはあくまでも、人生の先輩の有益なアドバイスくらいに考えてください。それ以上のものをタロットに期待しては、大きな過ちを犯すことになるでしょうから。








タロットの真の目的とは

実は、タロットを使用する際、占いとして未知の事を知ることよりも、この奥なる心(超自我=魂)との交流のほうが、はるかに大事なことのです。その奥なる心とつながれば、タロットを使わなくてもインスピレーションを通して、様々なことを知ることができるようになります。たとえば前世のことなどもそうです。また、他人の心理も読めるようになります。

タロットのカードとは、本来、そのインスピレーションを具体化するための道具でしかありません。つまり、「カードじたいに未知の力が宿っているわけではない」のです。

本当の未知の力とは、「自己の奥にある真の自己」であり、タロットや易学などのシンボル体系は、そうした真の自己(超自我=魂)と交流するために編み出された技法なのです。タロットや易学の真価は、まさにそこにあるのではないでしょうか。




〔八島高明・文〕