日本国憲法の受身文

日本国憲法には、多くの受身の用例があります。試みに調査してみました。


日本国憲法の受身文)五十二例
1日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、・・。(前文)
2国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。(第十一条)
3この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。(第十一条)
4すべての国民は、個人として尊重される。(第十三条
5すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(第十四条)
6選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。(第十五条・2)
7(何人も)又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。(第十八条)
8何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。(第二十条・2)
9何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。(第二十二条・2)
10婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。(第二十四条)
11配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚及び家族に関するその他の事柄に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的な平等に立脚して、判定されなければならない。(第二十四条・2)
12何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。(第三十一条)
13(何人も)・・、又はその他の刑罰を科せられない。(第三十一条)
14何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。(第三十二条)
15何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、・・。(第三十三条
16(何人も)・・、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。(第三十三条
17何人も、理由を直ちに告げられ、・・。(第三十四条)
18(何人も)且つ直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、・・。(第三十四条)
19(何人も)抑留又は拘禁されない。(第三十四条)
20又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、・・。(第三十四条)
21要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されねばならない。(第三十四条)
22・・、侵入、捜索及び押収を受けるとこのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、・・。(第三十五条)
23・・、(侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は)且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。(第三十五条)
24刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。(第三十七条・2)
25何人も、自己に不利益な供述を強要されない。(第三十八条)
26(何人においても)強制・拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。(第三十八条・2)
27何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、・・。(第三十八条・3)
28(何人も)・・、又は刑罰を科せられない。(第三十八条・3)
29何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。(第三十九条)
30又、(何人も)同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。(第三十九条)
31何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。(第四十条)
32両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。(第四十三条
33両議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、・・。(第五十条)
34・・、会期前に逮捕された議員は、その議員の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。(第五十条)
35両議院の議員は、議員で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。(第五十一条)
36衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、・・。(第五十四条)
37内閣総理大臣その他国務大臣は、・・。又、答弁は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。(第六十三条
38但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。(第六十八条)
39内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。(第六十九条)
40前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。(第七十一条)
41但し、これがため、追訴の権利は、害されない。(第七十五条)
42すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。(第七十六条・3)
43裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、・・。(第七十八条)
44最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に対し、・・。(第七十九条・2)
45・・、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。(第七十九条・2)
46前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。(第七十九条・3)
47その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。(第八十条)
48一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、・・(第九十五条)
49この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。(第九十六条・1)
50この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、・・、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。(第九十七条)
51日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。(第九十八条・2)
52・・、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、・・。(第百三条)

日本国憲法は、漢文訓読調で書かれているため、非情の受身の割合が多いことが予想される。また、第三章「国民の権利及び義務」(10から40条)に頻出している。

(受身の用例数)52例
(有情の受身)35例(67.3%)
(非情の受身)17例(4例は連体修飾)(32.7%)
→伝統的な漢文訓読系の古典と同様の出現率
(動作主の明示)5例(9.6%)
(主語と明示された動作主との関係)
有情−有情・・0例(0%)
有情−非情・・2例(3.8%)
有情−なし・・33例(63.5%)
非情−非情・・3例(5.8%)
非情−有情・・0例(0%)
非情−なし・・14例(26.9%)
(ヲ格)15例(28.8%)
→通常の受身文には見られない多い出現率。間接受身の婉曲的表現、あるいは、目的格の人権を明示。