自動詞の受け身

日本語では、自動詞の受け身という変わった現象があります。そのことをまとめてみました。

通常、「受身文」と「使役文」を表すとき、動詞は他動詞が用いられ、動作主はニ格で示され、「れる・られる」「せる・させる」で表されることが多い。
英語の受身文では、動詞は「他動詞」しか使用されない。しかし、日本語の場合、
○彼女は雨に降られた。
○私は子供に泣かれて困った。
○彼は他の人に先に合格された。
のように、受身文で「自動詞」も用いられる。そして、自動詞を用いた受身文は、被害を受けることが多く、『国語学大辞典』では「直接には他に作用を及ぼすことのないはずの動作の影響を、あたかも他動詞の直接影響を受けたのと同様に感ずる者を主語とする表現」として、
○あの二人は旅行の間中雨に降られたそうだ。
○そこに立たれるとみえない。
○春は霞にたなびかれ、・・。(古今・雑体)
○・・など定めつるかひもなく先立たれにたればいふかひなくてあるほどに、・・。(蜻蛉・下)
○などの例をあげ、「自動詞による極めて心情的な受身」とし、「迷惑の受身と称されるが良い意味の場合もある」としている。